日々記 観劇別館

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『パイレート・クィーン』初日感想(2009.11.28ソワレ)

グレイス・オマリー=保坂知寿 ティアナン=山口祐一郎 エリザベス1世涼風真世 族長ドゥブダラ=今井清隆 ビンガム卿=石川禅 ドーナル=宮川浩

昨日は帝劇まで『パイレート・クィーン』の初日公演を観に行ってきました。帰宅してすぐにぱたんと寝てしまったので一夜明けての感想となりますが、ごく簡単に(なるように努力して)記しておきます。例によりネタバレしてますので注意。
ストーリーは、ほとんどチラシや公式サイトに書いてある内容そのままです。あれ以上でもあれ以下でもありません。各場面に萌え所も少ないです。その代わり小学校低学年ぐらいの子が観てもとても分かりやすい展開なのではないかと思います。
そして複数あるダンスシーンがどれもやや時間が長め。ダンスはもちろん見応えがあるのですが、もう少し短くても話は成立するかも?と感じました。
冒頭にいきなりアイリッシュダンスがあります。その後ドゥブダラ、ティアナンほか海賊船の人々が登場して歌に入りますが、第1声はティアナンのかなり高音の歌声です。しょっぱなにあの音を出すのは歌い手に相当プレッシャーがかかると思います。山口さんも結構緊張しているように見えました。
ティアナンは1幕前半では若造(少年?)であることを意識してか、山口さん、ハイトーンで喋り、ちょろちょろ落ち着きのない様子で振る舞っていました。とても可愛かったのですが、ご本人に初日の微妙な緊張感が漂っていたので、素の山口さんがテンパって落ち着きがないのかそういう演技なのかがたまに分からなかったりも。あと、海賊船のやぐら(正式名不明)を上り下りするシーンがあるのですが、どこかえっちらおっちらな感じで(^_^;)、『エリザベート』の闇が広がるでハシゴを下りてくる場面とだぶりました。
グレイスは初めの少女時代からしっかり者で、ティアナンを完璧に尻に敷いてます。保坂さんは1幕からワイヤーアクション、立ち回り、そしてティアナンとのラブシーンと忙しいのですが、どれも全く危なげなし。ちなみにどうでも良いですがラブシーンではヅカキスでした。
そして保坂さん、やっぱり歌声が綺麗で良く響きます。山口さんのお声とのハモり具合が実にしっくりきていて気持ち良いのです。

ドゥブダラは本当に1幕しか出てきません。今井さん、重厚な衣装や半白髪の長髪&お髭が似合っていて貫禄たっぷりでした。しかしグレイスの結婚式のアイリッシュダンスでは何とグレイスやドーナルと一緒に踊ります。流石TDLのダンスチームなどで昔取った杵柄です。ティアナンがしょんぼり陰に隠れていて踊らないというのに。
でも、踊らなくてもティアナンの「君のそばで(I'll be there)」は絶品でした。この曲の歌詞が全部、その後のティアナンの全ての行動の原点になっています。山口さんの歌声からは、しょんぼりしつつも前を向いて歩こうとするティアナンの健気さとグレイスへの強固な想いがひしひしと伝わってきて、改めてこの人のファンで良かった、と思いました。
ドーナルはパンフで宮川さんも仰っていましたが、女性蔑視、怠惰、軟弱、臆病、卑怯と本当に良い所のない、実にステレオタイプな嫌なヤツでした。全てにおいて自分より優れた妻のグレイスを「女である」という点でしか嘲ることができないのは哀れと言えば哀れですが、2幕でグレイスに、切々と息子への情をレミゼのマリウスを彷彿とさせる歌声で訴えかけておいて罠に掛けるという大変卑劣な真似をしてくれるので、あまり同情はできず。とっととティアナンに刺されてしまえ!と素直に思わせてくれる宮川さんはやはり上手いと思います。

敵方であるイギリス側は……エリザベスのお召し替えが1幕・2幕で計4回ぐらいありました。ティアナンは少年〜成人に至るまでラストを除いて着た切り雀なのに、というのはさておき。
エリザベスは事前に山口さんが仰っていたとおり、高音で押していく歌が多かったです。涼風さん、最高音出し切った!という感じ。
ポジティブキャラのグレイスには実の所内面描写があまりないのですが、その代わりエリザベスが「ひとを愛する女こそ(She, who has all)」でグレイスを何もそこまで、というぐらい羨んで、自らの孤独と同時にグレイスの内面をも語ってくれているのだと解釈しました。
禅さんのビンガム卿は何だか可哀想でしたね。部下の失態(アイルランド民虐待)は確かに司令官の失態である、というのは分かりますが、女王様への忠誠心は本当に強かったと思うのに、グレイスと共鳴し合ったエリザベスからあっさりお払い箱にされ、すごすごと去りそのまま退場。禅さんファンの方が泣いているのではないかと心配です。

最も驚かされたのは、終盤のグレイスと、彼女の代わりに収監されていたティアナンとの再会の場面。ティアナンが、まあ囚人なので当然ですが、濃い髭面になっていたのには仰天しました。顔だけ見たら囚人バルジャンと区別が付かず。そして衣装は多少汚しの入った白装束。立ち上がった姿がほとんど(老けた)ジーザス。しかも白い光のスポットが当てられているので、あまりの神々しさに思わず息を呑みました。何かその辺狙いましたか?>制作側。

カーテンコールもアイリッシュダンスたっぷりでした。海外組のダンサーの皆さんのダンスの美しさは当然として、アンサンブルの皆さんも本当に努力されたんだな、と思いました。
そしてティアナン、ドゥブダラらプリンシパルキャストも肩を組んでアイリッシュダンスで登場?と思ったら、2ステップぐらいで終わってしまいました。ティアナンのダンス、この2ステップのみ(^_^;)。
その後、演出家山田さんがご登場&ご挨拶。客席からご覧になっていた作詞家ブーブリルさん&作曲家シェーンベルクさん&振付師のジョイスさんのご挨拶がありました。お三方を舞台の真ん中に招き寄せるのに、山口さんが一所懸命気を遣いまくっていました。

ブーブリルさんは、
レミゼ日本初演から22年の今年は『ミス・サイゴン』『レ・ミゼラブル』『マルグリット』そして『パイレート・クィーン』と自分達の作品が4作日本で上演されていて喜ばしく思います」
というようなことを語られていました。シェーンベルクさんは、
「今度はフランス産ではなく日本産のミュージカルも観たい」
というようなことを語られていました。いや、東宝に限定すれば日本産=M.A.だから、それ言ったら関係者には、突き刺さるあなたの言葉♪なんではないかと余計な心配をしてしまいました。ジョイスさんの一言はうろ覚えですが、素敵なミュージカルに関われて嬉しいです、というようなことを仰っていたと思います。
ちなみに、2階席から観ていた友人によれば、2階の最前列でJ・ケアードさんご一家がご覧になっていたそうです。もちろん奥様の今井麻緒子さんも同席されていましたが、特に他のお客が騒ぎ立てるようなこともなく皆さん客席に溶け込まれて観劇されていたとのことでした。2階の喫茶室は上演中から「本日貸切のため」として閉鎖されていましたが、演出家山田さんのブログ記事によれば終演後に2階で初日パーティーが開催されたそうですね。出演者ご一同も出席されたのでしょうか。
なお、初日、プリンシパルキャストからのご挨拶は全くありませんでした。もしかしたら今日の公演あたりでやってくれるのでしょうか?後で今日行かれた方のレポなど探してみることにします。