日々記 観劇別館

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『レ・ミゼラブル』感想(2009.10.7ソワレ)(今ジャベ&音響篇)

《キャスト》
ジャン・バルジャン山口祐一郎 ジャベール=今拓哉 エポニーヌ=新妻聖子 ファンティーヌ=シルビア・グラブ コゼット=辛島小恵 マリウス=小西遼生 テナルディエ=駒田一 テナルディエの妻=森公美子 アンジョルラス=松原剛志 リトル・コゼット=古口貴子 リトル・エポニーヌ=田中愛生 ガブローシュ=春口凌芽

今期レミを山口バルジャンで観られる回数は、極めて限られています。しかも現ジャベールの中で最もお気に入りの今ジャベールを観ずにどうするつもり?というわけで、あえて山口バルジャンの初日ではなく、今ジャベ初日を、台風が近づいているというのに職場を早引けして上京し、観てきました。

まずは今ジャベの感想から。
2年前に観た時より、心なしかパリで再会した後のバルジャンへの片思い度が激烈になっているように見えました。何と申しますか、焼けぼっくいに火がついて、暗い情炎が燃え盛ったようなそんなイメージ。
反面、囚人バルジャンに対峙する時や市長バルジャンと再会、対決する時には何だか怜悧な雰囲気を感じました。今まで今ジャベに賢いとか怜悧とかいうのを感じたことはなかったのですが*1、今期の若いジャベはまだ青臭い情熱にかられているようです。
個人的には2幕のバリケードで拘束されてから、バルジャンと目が合い、助けられるまでのやり取りが好きです。自分が圧倒的に不利で不名誉な立場にいる癖に「殺せ今すぐ」などと懸命に虚勢を張るところが何とも可愛いと申しましょうか。
橋の欄干を乗り越えて哄笑し入水する場面はもう狂った恋の情熱に殉じるようにしか見えず。
……すみません。かなりゆがんだ見方だという自覚はありますが、それくらいに今ジャベのバルジャン、あるいは彼の信じる正義に対するこだわりが凄まじかったということで、お許しください。

ところで今期は「オケ演奏が軽い」「マイク音量が小さい」という音響に関する不満の声を初日に行かれた方のブログで読んでいたので、一抹の不安を感じつつ劇場入りしました。
まずオケ演奏ですが、確かに塩田さんの指揮だと若干テンポが早く、やや走り気味に聞こえました。但し、もっと重厚にやってくれてもいいんじゃない?と気になったのはプロローグの旋律のみで、ストーリーに入り込んだ後はほとんど気にならなくなりました。
また、音響については、個人的にあまりエコーを効かせすぎるのは例え山口さんの歌であってもあまり好きではないので(「彼を帰して」で微エコーかけてますが実はあれも不満)、「やった、生声が聴けてお得(^o^)」とほくほくしてました。
それからマイクの音量。確かに声量で観客を屈服させるにはあの音量だと不十分かもしれませんが、山口バルジャンだけでなく他のキャストについても、生声の絶妙なさじ加減が堪能できて良かったと思います。
もっとも1階E列下手サブセンという割と舞台に近い席だったので、2階で聴いても同じ感想になったかは分かりません。

山口バルジャンの声が小さいのでは?という話もありましたが、プロローグからバルジャンの独白の前までは確かにかなり抑え目な声で歌っていたと思います。しかし調子が悪いという感じは全くしませんでした。「生まれ変わる前のバルジャン」の表現として声をコントロールしていたのではないかと推測します。
声の表現といえばシルビアファンティーヌも素晴らしかったです。工場解雇から「夢やぶれて」、そして髪を売るまではファルセットでひたすら柔らかく歌い上げていたのですが、娼婦に身を落としてから逮捕されるまでは地声に変貌します。死の床では再度ファルセット。そして終幕でバルジャンを迎えに現れた時にはどちらにも当てはまらない穏やかな声で歌っていました。

長くなったので、今さん以外のキャストや全体を通しての感想は次の記事にて。

*1:今さんではなく、あくまで彼の演じるジャベールについてです。念のため。