日々記 観劇別館

観劇(主にミュージカル)の感想ブログです。はてなダイアリーから移行しました。

『レ・ミゼラブル』感想(2009.11.7マチネ)(バルジャン比較篇)

ジャン・バルジャン別所哲也 ジャベール=岡幸二郎 エポニーヌ=笹本玲奈 ファンテーヌ=山崎直子 コゼット=菊地美香 マリウス=泉見洋平 テナルディエ=安崎求 テナルディエの妻=田中利花 アンジョルラス=原田優一 リトル・コゼット=吉井乃歌 リトル・エポニーヌ=飯田汐音 ガブローシュ=吉井一肇

友人の誘いがあり、初めてバルジャンが山口さんではない『レ・ミゼラブル』を観ることになりました。
バルジャンと子役ちゃん達以外は一度でも観たことのあるプリンシパルキャストばかりでしたが、バルジャンが違うだけでかなり作品に抱く印象が異なりました。

別所バルジャンは歌を台詞として丹念に歌い、歌詞の一音一音をきっちり発音するバルジャンでした。演技も同様で、本当に一場面ごとに几帳面に苦悩している、小説の頁を一枚ずつめくるように人生を刻んでいるイメージ。
臨終場面など、立ち居振る舞いも歌声もよぼよぼしまくっていました。友人によれば、今井バルジャンの臨終の老け込み度も相当凄まじいらしいですが。それこそ衝撃で客席から啜り泣きが漏れ聞こえる程に。
観なれた山口バルジャンとは当然ながら役作りも本人の資質も全く違います。例えば小さい所では、地下水路の場面では山口さんは左肩にマリウスを担いで登場しますが別所さんは横抱きにして登場するなど(後から水路を歩く時は肩にも担ぎます)。
しかし特に違うと感じたのはそれぞれのバルジャンの「神の道」の辿り方です。以下、山口ファンの視点での拙い文章力による戯言としてお見逃しを。
山口バルジャンの場合は、人生の分岐点でもちろん大いに苦しんではいるのだけれど、実は無意識においてはちゃんと神の道を照らすほのかな光が見えていて、それを選び取っているだけであり、ひとたび道を歩み始めたならもう迷いはないように見えました。
対して別所バルジャンは、激しい苦悩の果てに選んだ道が結果的にたまたま神の道だっただけ。道を歩みながらまだ何%かは「あれで良かったんだろうか?」と考え続けているように見えました。偶然ドラマチックな人生を送っているだけの、我々観客と等身大の人間。この人、紙一重でジャベールと同じく闇に還っちゃっても不思議はないぞ、という印象でした。
ただ、作り込みはこんなにも異なりますが、どちらのバルジャンもジャン・バルジャン以外の何者でもないことには相違ありません。これが正に、「みんなちがって、みんないい。」ってことだと思いました。
バルジャンを語るだけで長くなってしまいましたので、他キャストの感想はまた後程。