日々記 観劇別館

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「ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』イン コンサート」(Streaming+配信)感想(2020.7.19 13:30開演)

キャスト:
フランキー・ヴァリ中川晃教 トミー・デヴィート=藤岡正明尾上右近 ボブ・ゴーディオ=矢崎広東啓介 ニック・マッシ=spi/大山真志 ボブ・クルー=加藤潤一/法月康平 ノーム・ワックスマン=畠中洋 綿引さやか 小此木まり 遠藤瑠美子 大音智海 白石拓也 山野靖博 若松渓太

これまで、ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』の日本版にはなかなか観劇のご縁がありませんでした。まず、2016年の初演、2018年の再演ではともにチケットが全く取れずに断念。今年2020年に帝劇で再々演の筈であった公演ではようやくチケット確保! と喜んだのもつかの間、コロナ禍のために公演中止に。

今回、コンサートver.で1幕物としての公演実施と、Streaming+での配信が決定したと聞き、前週の明治座コンサートに引き続きまたもや週末の時間を配信鑑賞に割いて良いのか? とぎりぎりまで悩んだ末、開演7分前になって本日の配信チケットを購入し、約1時間半ライブ視聴いたしました。

実は最初は8月に入ってから配信を観ようかとも考えていたのですが、諸事情により初日直前に4公演分の無観客開催が決まったことを知り、1日でも早く応援したい! と思ったのも本日鑑賞した動機の一つであったりします。

配信が始まって間もなく、一応節目節目でストーリーの説明や過去の公演の舞台映像は入るものの、そもそも「フォー・シーズンズ」の予備知識が0な上、正規上演版を全く観たことのない人間にはついていくのがなかなか厳しく感じられました。やむなくWikipediaに載っている1幕と2幕の粗筋を横目で見ながら鑑賞していましたが、途中で語り手が交替しながら語り継いでいくスタイルを、元々は同じ舞台に立つことがありえないダブルキャストに巧妙にやり取りさせながら踏襲しているのは上手い演出だと思いました(演出家は藤田俊太郎さん)。

実在のグループ「フォー・シーズンズ」の栄光と挫折に彩られた年代記を彼らの楽曲を使用して描くジュークボックス・ミュージカルという本作の性格上当然ではありますが、音楽はノリの良いロックンロールで大変に良かったです。

なおボーイズ・タウン・ギャングで聴き慣れていた「君の瞳に恋してる」のオリジナル歌手がフランキー・ヴァリだったことは今回初めて知りました。あと「ショートショーツ」は日本人としては「『タモリ倶楽部』のテーマ」として摺り込まれているもので、あの曲が流れるだけで脳内にギャルのお尻が乱舞し始めるのは困ったものです😅。

また、あまり品行方正とは言いがたいニュージャージーの若者達が結成したグループが、名声を得た後に男女の色恋沙汰や主人公の家庭崩壊、そしてメンバー間の才能の力関係や金銭問題でじわじわとグループ内の結束が壊れていく展開は、筋書きだけ見ると本来かなり生々しいと想像しますが、今回はコンサートver.のためその辺りがうまくマスキングされた面もあるのではないかと思います。もっともラストでは皆年月と年齢を重ねて丸くなっているので、決して後味は悪くないのです。

キャストについては、若手もベテランも全員歌唱力があり、高音域をしっかり出せる役者さん揃いです。実際の公演ではシングルキャストの中川さん以外のメインキャストがBLACKとGREENの2チームに分かれて交互出演する筈だったのが、コンサートver.では一堂に会して歌っています。配信で観た限りでは、自分の好みのキャストはBLACKとGREENにばらけていたので、これはこのカンパニーでの再演が実現したら両チームを観ないといけないのかな、などと考えながら観ていました。

しかしなんと言っても聴き所は中川さんのファルセットです。ヘッドフォン越しであっても心地よく響いてふわっと広がるあの歌声を聴けるだけでも、耳が幸せになれます。

コンサート終演時には、配信画面からチャットでキャストに盛大な拍手を何度も送りました。どうしても前回と同じような感想になってしまいますが、コンサートver.も十分楽しかったものの、この演目もやはりミュージカルの正式な公演でも観たい、という気持ちがかき立てられています。先週も書いたとおり配信はとてもありがたくその恩恵を受けていますが、いつか必ず劇場で直に観て応援したいと思います。