いきなりですが今回の忠教様についてです。あの斉彬兄上との若き日の思い出の蘭学ルーム(何て言ったらいいんでしょう、あの部屋?)で、兄上の遺品のワインを酌み交わしつつ帯刀を側近に取り立てていました。立って向き合う場面で良く瑛太くんと身長が釣り合ったな、と感心したのはさておき*1、未だに出しゃばってくる父上(まだ生きてた!母上も!)のこととか不安もあるけど、今は兄上の遺志を忠実に引き継いで革命を起こしたい、という思い入れが彼を突き動かしているという雰囲気に充ち満ちていたと思います。
でも今は思い入れはあっても所詮中央の経験のない田舎の殿様な上、ある種カリスマである兄上にぞっこんだった西郷どんほか薩摩の志士達が汲み取っていた想いとは微妙にずれていて、それで対立が起こっちゃうんだろうな、と思うと悲しいです。
今回格好いい!と思ったのは、落飾して天璋院となった篤姫が、大奥に政治に介入されたくない故に彼女が家茂の後見人になることを聞いてない、とシラを切る井伊大老にきっぱりと反論する姿でした。井伊大老のやり方が強引とは言え、あくまで幕府を守る立場にある筈と分かってはいても、彼女は彼女で最愛の夫の遺志を継ぐという強い気持ちがあるから一歩も引けない、という強い意志が感じられました。井伊大老との戦いが来週も引き続き描かれるようなので楽しみにしています。井伊大老は演じる梅雀さんの腹に何物もありそうな表情が味わい深いので、そうした意味でも楽しみです。
お志賀は最後に「女」全開でした。「愛する」という日本語が史実では明治以降に生まれた言葉であることを脚本の田淵さんが知らないとは思えないのですが、それをあえて使わせることで、一線を越えていたかとかそういうレベルを超越した形で、家定と篤姫の絆の深さを、二番手に終わった*2お志賀の視点から語らせたかったんだろうと推測しております。
それから、自分の知らないうちに最愛の息子を喪った本寿院こと高畑淳子さんのベテラン演技にも圧倒されました。真実を告げた篤姫を花の枝で打ち据える鬼の表情から、篤姫を恨んでもどうしようもないと悟り、息子を供養しながらひたすら号泣する表情の変化。多分、夫を亡くした時以上に悲しみは深かったのだろうと思わせてくれました。
もう1人のベテラン松坂慶子さん演じる幾島も、そろそろ退場が近づいているようで寂しい限りです。繰り返しになりますが、口うるさい姉と年の離れた妹のような天璋院との友情自体は変わらないのだけど、1人のキャリア女性としては主人である天璋院と決定的に袂を分かってしまい、任務を遂行できなかった立場で職に留まることは自分で許せないのでしょうね。
何となく、後半の『篤姫』のテーマは、「遺された者達がいかに死せる者の果たせなかった想いを受け継いで生きるか」ということなのかな?と考えております。もちろんこれまでも篤姫(天璋院)は、自分のために死を選んだ菊本を初めとして、生死を問わず様々な人の想いを受け止めて人生を切り開いてきたのだけど、これからは天璋院だけでなく、薩摩の皆さんも死者の想いを受け継いで、果たせなかったものを実現すべく頑張ることになるわけで。その頑張りが100%思い通りに実るわけではなさそうなのがまた切ないのですけれど。そう言う意味でも、味のある敵キャラとしての忠教(久光)様には大いに期待しております(所詮オチはそこです(^_^;))。