日々記 観劇別館

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『レ・ミゼラブル』感想(2007/7/31マチネ)

ジャン・バルジャン山口祐一郎 ジャベール=今拓哉 エポニーヌ=新妻聖子 ファンティーヌ=山崎直子 コゼット=富田麻帆 マリウス=山崎育三郎 テナルディエ=徳井優 テナルディエの妻=森公美子 アンジョルラス=坂元健児 ガブローシュ=横田剛基

先週土曜出勤があったので、その代休を使って帝劇まで出かけてきました。職場は現在修羅場状態なのでかなり申し訳なかったり。

本日は待望の今ジャベールマイ初日でした。噂を聞いて期待していたとおりの熱く真っ直ぐなジャベールでした。あのキラキラした瞳で睨みつけられたらそれだけで犯罪抑止になりそうです。今さんのジャベールは全身くまなく鍛え抜かれている上、砦でも銃を預けない等隙のない戦士という印象を受けました(でもバルジャンには負けるんだけどね)。また、随所で見せる警棒捌きが実に美しいです。公式ブログに、開演前に警棒の代わりに野球のバットを振り回したエピソードが載ってましたが、それもさぞかし美しかったことでしょう(^_^)。
今ジャベでもう一つ特筆しておくべきは自殺の場面の水に飲み込まれる演技の上手さでしょう。水流に翻弄されて、流されて(転がって)、気づいたら闇へと姿を消していました。岡ジャベの消え方(7/1感想参照)も上手いと思いましたが、あれよりもリアル感を重視しているように見えます。もっともこの場面の演出には照明さんの功績も大だとは思いますけれど。
また、これは次回も観てみないと言い切れませんが、山口バルジャン、他の人のジャベールの時よりも所々でテンションが高かったように思いました。例えば「バルジャンの独白」では♪生まれ変わるのが〜と♪神の御心か〜の間で思い切りタメを作って感情表現を深めていました。オケピ、合わせるの大変だろうな、と思いながら観てましたが。
二幕の「彼を帰して」も、いつも静かな祈りのイメージが強かったのだけれど、本日は激しい熱情を込めた祈りを捧げるイメージで歌われていたように感じられました。考えてみたらバルジャンは物語の中で聖人度が高まっているとは言え、本来はかなり激しい人物なので、その一面が今回は強く打ち出されていたように思います。
山口バル・今ジャベの対峙する場面で最も印象的だったのは、下水道での対面シーン。パッションを放って吠えかかるジャベールに釣られて(?)、バルジャンもいつもの3割増しに熱く叫んでおりました。

他キャストの感想も簡単に記しておきます。
テナルディエ夫妻は「ノミの夫婦」徳井・森コンビでした。私的ベストテナ夫妻は陽性悪党の駒田・森コンビなのだけれど、普通の人間の顔をして平然と犯罪を犯す徳井さんもなかなか味わい深いです。森さんはいつも通りマリウスの婚礼の席で飲み食いしまくってました。更に今回はパリでパンかごを下げたコゼットに再会した時、パンをむさぼり食ってました。
新妻エポは初見でした。島田エポと知念エポを観られていないのだけど(知念エポは予定あり)、マイベストエポは今のところ彼女です。何と言ってもふくれっ面で美人じゃないのが良いです。歌声も力強いですし。もうちょっと優等生っぽさが抜けてくれると良いのだけれど。
山崎マリウスはがぜん上手くなっていました。ラストシーンでちゃんと包容力のある夫に成長してます。富田コゼットは前評判を聞いて覚悟はしてました。声量はないけどまあまあ?と思っていたら、「バルジャンの告白」の前の場面で声がひっくり返ってました(笑)。富田コゼット、二度目はもういいかな……と思いましたがどうももう一度だけ観ないといけなさそうです。
山崎ファンテも、7月初めに観た時よりはだいぶ大人しくなってました。でも、声質がもう少し柔らかい方が個人的には好み。どうも自分の耳、岩崎ファンテに呪縛されているのかも知れません。

そしてアンサンブル。理由あってアンサンブルの歌唱力に今回は注目してました。結論。ソロだと実力にばらつきがあって首をかしげてしまうような人もいるけれど、合唱ならOK。あと、決戦前夜の乾杯シーンは上手かろうと下手だろうとどちらにしても泣けるので(いえ、歌えればもっと泣けるかもしれませんが)、私的にはOK。クールフェラックが今回麻田さんじゃなくて残念……というのは別に歌唱力とは無関係です(^_^;)。
バリケード壊滅前後のシーンで、ガブローシュがグランテールの制止を聞かずに戻ってくるあたりからどういうわけか涙があふれて仕方ありませんでした。ガブローシュを守りきれなかったグランテールの悔恨とか、捨て身で赤旗を振りまくるアンジョルラスの心境とかが、プロの軍隊から見たら学生の反乱なぞ児戯に等しかったかも知れないけれど、学生には学生の理由があったのだと考えると、これはお芝居なんだと分かっていてもどんどん心になだれ込んできて止まらず。で、「マリウス!みんなの分も生きてくれ!」と本気で思ったりして。まんまと乗せられてます。

最後に、山口バルジャンと組む全てのジャベールを観た感想としては、歌声のハモり度は岡さん、その次ぐらいに禅さんが高いと思いました。そして演技の共鳴度が高いと思ったのは今さん。阿部さんも頑張っていらしたのだけど、まだ先輩ジャベ諸氏の方が1枚も2枚も上かな、という感じです。