日々記 観劇別館

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『レディ・ベス』前楽感想(2014.5.23ソワレ)

キャスト:
レディ・ベス=平野綾 ロビン・ブレイク=山崎育三郎 メアリー・チューダー=未来優希 フェリペ=平方元基 アン・ブーリン和音美桜 シモン・ルナール=吉野圭吾 ガーディナー石川禅 ロジャー・アスカム=山口祐一郎 キャット・アシュリー=涼風真世

5月24日に帝劇千穐楽を迎えた『レディ・ベス』。マイ楽は、平野ベス、未来メアリー、山口アスカムの楽公演だった、23日ソワレ(帝劇前楽)にて迎えました。

ベスについては地方公演を追いかける予定は現在の所はないので、悔いのないように、視覚と聴覚を凝らし、そして心の目と耳も全開モードにして、じっくりと鑑賞しよう!という意気込みで、1階K列下手サブセンターブロックの座席に着きました。

とにかく、今回、自称おじーちゃんのアスカム先生が最初から最後まで可愛過ぎました。終演後に、人前でさえなければその辺をばんばん叩きながら叫びたくなったくらいです。
1幕で、早くベスに会いたくていそいそと館を訪れ、今日もベスと会話できるのが嬉しくてたまらない、という先生。
ベスが新約聖書は父上の形見です、と抵抗する時に、養育係とアイコンタクトして「全くしょうがないなあ」と困りつつ微笑む先生。
女王の星の下に生まれたベスへの期待を語り掛ける先生。
ベスを大切に大人に育てるべく身を捧げる養育係の姿に微笑む先生。
占星術を信じて、囚われのベスの解放をひたむきに待ち続ける先生。
恋に迷い女王への道を踏み外しかけたベスに「お父さんは悲しい」と言わんばかりの悲鳴のような言葉を絞り出す先生。
ベスの王位継承を誰よりも信じていた癖に、いざその日が来たことを悟ると「落ち着くのだー!」と誰よりも落ち着きなく舞い上がる先生。
恋人との別れを決意した青年を、自分はベスに教えられなかった「愛」を教えてくれたと労う先生。
そして、感無量な表情で女王エリザベス1世の即位を見守るエンディングの先生。
……どの先生も、もう本当に可愛くて仕方がありませんでした。こんな素敵なアスカム先生を見せてくれて、山口さんありがとう(^_^)。
石丸アスカムを観ていないので比較できないのが残念ですが、石丸さんは石丸さんできっと魅力のある先生を見せてくれているのだろうと想像しています。

今回、気づいたらアスカム先生ばかり目で追っていて、他に目配りができていませんでしたので(笑)、以下は簡単な感想のみとなります。

平野ベスと育三郎ロビン、それから平方フェリペは、初日以来久々に観ました。
ベスとロビンは、2人の互いに引きつけ合う関係性、具体的にはアイコンタクトや呼吸が、随分良くなっていると至る所で感じました。育三郎ロビンは、やっぱり加藤ロビンよりは幼い印象でしたが、それでもだいぶ子供っぽさが薄れた気がします。平野ベスは、花總ベスのような高貴さが薄い分、おきゃんなイメージと表情の豊かさが武器だと思いました。『レディ・ベス』という作品の成長を象徴するような2人の演技でした。

平方フェリペは、やっぱり古川フェリペより少しだけ割り切ったオトナな印象を受けました。大国の王子という自分の立場も役割も、爛れた遊びへの耽溺も、全部割り切って生きている感じ。
古川くんのような滲み出るどす黒さはない代わりに、顔が黒かった、のはさておきまして(^_^;)、何が起きてもクールに微笑んで淡々と受け容れる(但しベスに袖にされた時を除く)さまにぞっとさせられました。

ガーディナー猊下とルナール閣下のコンビネーションは、また一段と濃くなっていました。
猊下については、2幕の閣下とのデュエットで閣下を誘惑するような仕草があって気になっていたのですが、トークショーか何かで、当時の聖職者は女人禁制ゆえに「そういうこと」をしていたのでこういう仕草が入っていると言っていたという話を聞いて、納得しました。まあ、閣下は華麗にかわしているわけですが。
ただ、このコンビには大いに楽しませてもらった一方で、本来は色々と引きずっていて簡単に割り切れる性格ではなさそうなメアリーが、この2人の濃すぎる煽りにあえて乗って、割り切って生きようとして、でもその結果が実らないのは何かやはり辛いなあ、と思います。

あと、印象深かった点としては、ベスの館に王位継承の使者が訪れて指輪を渡す場面で、ベスが指輪を手に取るまでの間が、とても長かったことでしょうか。ベスの選択と決意がいかに重いかを示す場面なので、もちろん間が長い分には良いのですが、あまりの長さに「これドラマなら放送事故だよ」と思ってしまった不謹慎な観客です。

カーテンコールでは、育三郎くんの仕切りで、千穐楽より一足先に楽日を迎えたプリンシパル3名からご挨拶がありました。
未来さんは、最初の名乗りから締めまでが本当に折り目正しくびしっとしていて、おお、流石、元ジェンヌさんは違うぞ、と思わせてくれました。
平方くんは、上演中から何か顔黒いなー、どうしたの?と頭の隅で気になっていたのですが、挨拶で、
「気合いを入れすぎてドーランを塗りすぎました」
と語っていたので、物凄い勢いで得心しました。そして、何と平方くんからは、
「皆で『クールな頭脳に、ちゃんちゃんちゃん、クールヘッド!』で締めましょう」
と号令が。できるかー!と笑いつつ、つい一緒にポーズを取ってしまいました。まあ、一方で山口さんを横目で見て「よしよし、ちゃんと(?)できてるわね、良かった」と失礼なことを思っていたりもしたわけですが。

続いて山口さんからのご挨拶。
「皆様とご一緒できておじーちゃんは心より幸せでした」
といういつものフレーズに続いて、
「また皆様にお会いできることを心より願っています」
の一言が。
小さいことなのですが、「楽しみにしています」ではなく「願っています」と口にされていたことに、個人的にじわりときました。次に再会できるのは決して当たり前のことではなく、様々な幸運の積み重なった結果の産物であると、2013年1月のあの出来事からの経緯も踏まえて、改めて感じ入っています。
しかし育三郎くん、挨拶が終わった後に「山口様、ありがとうございました」って結婚式じゃないんですから(^_^;)。

最後に平野さんのご挨拶。子供の頃最初の夢が、ミュージカルスターになることでした、その一歩が叶って幸せです、ということを、感涙を堪えながらお話しされていたと思います。彼女が名前を成した声優のお仕事を忘れてしまったのか?という懸念の声もちらりとネットでは見ましたが、彼女のブログなどを見ると、声優業と俳優業をしっかり両立している諸先輩方への敬意が現れているので、その辺は大丈夫なんじゃないかなあ、と思います。

充実した思いに包まれながら、帝劇を後にいたしました。恐らく、次に帝劇を訪れるのは、今年の冬になりそうです。冬はプライベートで忙しいシーズンになりそうなのですが、何とか『M!』の観劇スケジュールだけはひねり出したいと思っています。