日々記 観劇別館

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『レディ・ベス』初日感想(2017.10.8ソワレ)(その1)

キャスト:
レディ・ベス=花總まり ロビン・ブレイク=山崎育三郎 メアリー・チューダー=未来優希 フェリペ=平方元基 アン・ブーリン和音美桜 シモン・ルナール=吉野圭吾 ガーディナー石川禅 キャット・アシュリー=涼風真世 ロジャー・アスカム=山口祐一郎 リトル・ベス=山田樺音 リトル・メアリー=桑原愛佳

帝劇にて『レディ・ベス』再演初日を観てまいりました。
新演出版と聞いていましたが、実際初演からは修正や差し替え、カットされた箇所が結構ありました。以下、気づいた変更点の一部です。と言っても何せ初演を観たのが3年半も前につき記憶も曖昧な所があるので見落としもあるかも知れませんが。

  • プロローグのメアリーとベスの生い立ちと確執の経緯の説明場面に子役が登場。ヘンリー8世、キャサリン(メアリー母)、アン(ベス母)も登場。
  • あれ? 樽隠しに失敗している? で、別の時に成功?
  • 「王国が現れる」の前にベスが宮殿で辱めを受け憔悴して帰宅したことをキャットがアスカム先生に伝える台詞が追加。このほかにも場面ごとに状況を説明し次の場面に繋ぐ台詞が随所に追加。
  • フェリペの出番が大幅にカット。ベスに手を出すのはロビンの存在を知った時点で諦めてる感じ? そしてナレ死……じゃなくてナレ退場。
  • 「神よ祝福を与えん」の歌詞が変えられてる?(確証なし) 初演では民衆が田舎に移送されるベスを見て「父上に似て高貴な居住まい」と讃える歌詞があったのがなくなり、今回は違う歌詞になっていたように聴こえましたが、さて?
  • 最後の姉妹の対面でヘンリー8世の帽子を被ったベスにメアリーが父上の面影を見て驚く場面がカット。
  • ベスとロビンのデュエットがまるっと新曲に差し替え。「もう誰とも結婚しない」じゃなくなった!
  • ベスのソロ新曲が追加。

上に書いたうち、下から3番目と4番目についてはもし聞き違いでなければ、田舎で幽閉され屈辱を受けて「父上ならこんな時もきっと立派に振る舞うだろうに……」と嘆くベスにアンが「父上のことは気にせず、あなたはあなたの生きたいように生きれば良いのよ」とフォローする場面とも繋がると思うのですが、さて、これで聞き違いだったらどうしましょうか(^_^;)。

全体の印象としては、説明的な台詞や場面が増えたことで初見の観客にもぐっと話が分かりやすくなったと思います。ただ、私自身はポジティブに受け止めていますが、「一つ一つ説明って、客をバカにしとんのか、われぇ!」という批判の声があるのもまあ分かります。

ごく個人的趣味としては、これは初演の時も感じたことですが、もう少し作品全体を貫くうねりのようなものも欲しいな、とつい考えてしまうのです。
今回、アンがより一層ベスの内面との一体感を強めた存在として描かれており、また、アスカム先生の、王の資質を存分に兼ね備えた賢い王女ベスへの期待と信頼が初演よりも強調された演出になっていて、その2人が歌う「愛のため全て」はベスの内面の葛藤を如実に示した佳曲であると思います。いかにも、平凡な女性としての幸せな恋愛と王冠を頂くであろう者の他者を幸福に導く義務との間で葛藤した主人公が目覚めて立ち上がることを期待させるような。
しかし、いかんせん肝心のベスの視線が「愛を取るか王の義務か?」に専ら向けられていて、王が見るべき国家や国民にあまり向けられていないので、その点でこの物語に肩透かし感があるのは否めません。

ただそれでも、相手役のロビンとの関係について、最後に「2人は離れても同じ空の下でいつまでも一緒だ」と初演よりはぐっと前向きになってくれたのは良いことだと思います。
そして、何と言っても、王冠を頂いた花總ベスの女王オーラには上記のような細かいツッコミを一撃のもとに吹き飛ばす説得力があります。初演の時にも、
「花總ベスは恋愛モードは一瞬の血迷いに過ぎず、あくまで女王モードが本来の姿だ」
という雰囲気を醸し出していましたが、再演までの3年半で女王モードが強化されたように感じられます。
今のところ花總ベスがはまり過ぎていて、もう1人の平野ベスのイメージがあまり想像できず困っているところです。

というわけで長くなりましたので、キャストの感想は「その2」に続きます。