日々記 観劇別館

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『レディ・ベス』感想(2017.10.15マチネ)

キャスト:
レディ・ベス=花總まり ロビン・ブレイク=加藤和樹 メアリー・チューダー=吉沢梨絵 フェリペ=古川雄大 アン・ブーリン和音美桜 シモン・ルナール=吉野圭吾 ガーディナー石川禅 キャット・アシュリー=涼風真世 ロジャー・アスカム=山口祐一郎 リトル・ベス=斉藤栄万 リトル・メアリー=石倉雫

今季2度目の『レディ・ベス』観劇でした。しかも座席は今季唯一の最前列!
ただ今回は観劇前に腰痛が悪化したり(医師の診察を受け少しずつ回復傾向です)、もしかしたら劇場でお会いできるかも知れなかった方とすれ違ってしまったり、観劇前に即日修理を期して修理窓口に持ち込んだ愛用のPCの修理が、思った以上に故障が重症だったために完了せずお預けになってしまったりと、自分としてはかなり残念な1日になってしまいましたが、観劇そのものは割と充実感があったと思います。

今回はロビン、メアリー、フェリペが初日とは別キャストで、子役も2人とも別キャストでした。そして花總ベスは今季見納めの予定です。

まず、和樹ロビンは育三郎ロビンよりも少し大人で包容力のある雰囲気に感じられました。私的にはこちらのロビンの方がしっくり来るようです。

初日の感想にも書いたとおり前回ロビンを観た時には、
「ロビン、お前さん、何故自分の思いだけで民衆の希望の星を落とそうとするんだい?」
と疑問にしか思えなかったのですが、今回は全く異なり、
「ロビン、これから星の定めに従って険しい道を歩む姫君に、肉体や身分に縛られぬ『魂の自由』の素晴らしさを教えてくれてありがとう」
と、まるで自分がアスカム先生に成り代わったかのような気持ちで素直に好印象を抱き、彼の涙に共感を覚えました。
また花總ベスについても2幕の半ば辺りから、
「この子がロビンに惹かれるのは、自らの魂を解放してくれるかも知れない存在だからではないか?」
と思わせてくれる空気を全身に漂わせていたと思います。
初演のベスとロビンのように、他の誰とも決して恋も結婚もしない、と相手を縛り合う関係ではなく、どんなに離れて手の届かない場所にいても魂が自由なら同じ空の下でいつでも一緒だ、と言い切れる関係に再演では変化したのだ、と、今回の和樹ロビンと花總ベスを観て遅ればせながらようやく理解できたような気がします。

なお「手の届かない」から連想したわけではありませんが、和樹ロビンが花總ベスの所に夜這い、失礼、軟禁先に潜入しようとする場面の「とーどーかなーいー」でつい、
「いや、君の体格ならもっと高い位置でそのターザンロープ使えば、余裕でベランダに届くだろう」
と思った瞬間、ぷぷぷと吹いてしまいました。お二方からは見えなかったと思いますが、ごめんなさい。

話は変わりまして、今季初鑑賞キャストの2人目、吉沢メアリーについてです。
何とも寂寥感漂う女王だと思いました。亡き母の信じていたものを忠実に守り母に報いるために手を汚すことも厭わない孤独な生き方はWキャストのメアリー2人とも共通なのですが、未来メアリーが「動」で「攻め手」ならば吉沢メアリーには「静」で「受け身」、そして必死感の強さが感じられました。フェリペとの結婚はもちろん政略結婚ではありましたが、それ以上に自らの縁者であるスペインとの繋がりを何としても失いたくなかったのではないでしょうか。荒涼とした哀しみを湛えたメアリーなのです。

それから、古川フェリペ。もちろん見目麗しいですが、とりわけ目力が密かに素敵なフェリペです。自由意思が許されず、いつでも国家の手駒として動くことが求められる立場である王族としての諦観の念と、そのような立場だからこそやるべきことはきっちりやらせていただくぜ、な割り切った感情とが同時にあの目力に込められていたように見えました。以前よりすっかり立ち姿に余裕が出て頼もしい感じがするのは、来年Wキャストではありますがついに帝劇での主演を射止めたなどの自信からでしょうか?

今回の「ネタ」としては、フェリペとメアリーの結婚式での聖書(禁書。ベスを罪人扱いするための唯一の物的証拠)を巡る攻防戦で、聖書がオケピに転落していました。私の目にはオケピにストレートに落ちていったように見えましたが、オケピ上部に張ってあるネットに引っかかったという話もあるようです。あの聖書にスペアがあるかは定かではありませんが、あの後聖書を使う場面がなくて良かったね、と思いつつ見守っておりました。

アスカム先生に関しては、前回ほどベスへの信頼に恐ろしさは覚えませんでした。逆に今回は、ベスに向ける信頼厚い眼差し、そしてベスが王位を選んだ後にロビンにかける言葉の暖かさがたまらなく心に染みて、涙が出そうになり、まさに今のような季節、時々冷たい風の吹く秋の空の下、力強く優しい歌声が包み込んでくれるような感覚を覚えました。
そういえばこれはどなたかがツイートされていてようやく把握したのですが、「王国が現れる」の前にアスカム先生が貴女はお父上にないものを持っている、それは……とベスに語りかける場面で、初演では「それは、愛だ」と言っていた台詞が「それは、世界を変える力だ」に変わっていました。この変更により、アスカム先生が愛弟子に対し抱いている期待の像がよりはっきりと浮き彫りになったように思います。
なお、初演と再演の台詞や演出の違いについては、当方が初日に気づいた分と上記のアスカム先生の台詞のほかにも、まだまだ存在しているようです。例えば、初演にはベスが戴冠式で誓いを立てる台詞(歌)があったのが無くなったなど。私自身はそう言われてみれば! という感じで、初演への愛が足りなかったことがばれてしまいました(^_^;)。

次回は少し間が空いて、10月28日ソワレを観劇の予定です。今季初めて平野ベスが見られるのを楽しみにしています。