日々記 観劇別館

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『ダンス・オブ・ヴァンパイア』帝劇千穐楽感想(2011.12.24マチネ)(1幕)

キャスト:
クロロック伯爵=山口祐一郎 サラ=知念里奈 アルフレート=浦井健治 アブロンシウス教授=石川禅 ヘルベルト=馬場徹 シャガール=コング桑田 レベッカ阿知波悟美 マグダ=Jennifer クコール=駒田一 ヴァンパイア・ダンサー=森山開次

TdV帝劇楽を見届けてまいりました。マイ楽にして、開次さんマイ初日、そして今年の観劇納めでもありました。
当日のお席は1階W列上手ブロック。役者の細かい仕草は見えませんが、舞台全体が見渡せて、かつ見えなくて良いものが見えることもない、良いお席でした。
以下、できるだけ時系列で、印象に残った場面について思い出しながら書いてまいります。実は一度途中まで1時間ほどかけて書いた感想文があったのですが、操作を間違えて消してしまったので(泣)、それも思い出しながら記します。

前にも書きましたが、浦井アルフは開演前のアナウンスから、観客を世界に引き込んでくれます。「シャーッ!」というヴァンパイアの物真似叫びだけでどうしてあんなに笑えるのでしょうか。
客席が暗転、オーヴァーチュアが奏でられると下手ブロックから通路を駆け抜け浦井アルフ登場。ここからかまくら教授を見つけるまでの短いプロローグの間の歌と演技だけで、浦井くん、アルフがどんな性格の男の子かを観客に伝えきっているのは素晴らしいです。ここで氷漬けの教授を触ってギャーギャー騒ぐだけ、暗転ギリギリまで何もできないのが浦井アルフで、取りあえず蹴飛ばして起こそうと試みるのが育三郎アルフです。
ガーリックは飛ばしまして、客室案内場面で知念サラのファルセットの歌声がばっちりはっきり聞こえてきた時、殊の外ほっとしました。前日の高橋サラのファルセットが、G列だったのにあまり聞こえなかったので……。浦井アルフと知念サラのデュエットは声量がある同士なので、これも安心して聴けます。ただ、デュエットの最後の方では下手通路から大きい人が入場してきますので、どうしてもそちらに目を遣らずにはいられないわけですが(^_^;)。
その大きい人は、「神は死んだ」の第一声から、いつになく艶々の声を聴かせてくれました。表情も何とも言えないとろりとした憂いに満ちていて、あ、楽に合わせてしっかりテンションを上げてきてくれている!と感じられ、こちらのテンションも上昇せずにはいられませんでした。上手からの退場は、一旦前方で憂いの表情で立ち止まった後は、ちゃんと曲の後奏が終わるのに間に合うよう、早足で歩いて行きました。入れ違いにクコールが登場するので、伯爵、きっとドアの外で「行ってらっしゃい」とか声がけして使用人を送り出しているんだろうな、と思うとそれもまた萌えるのです(^_^)。
ここで、クコールのろうそく要求時のわめき方がいつもとちょっと違っていて笑ったのですが、具体的に何を言っていたかの記憶が曖昧だったりします。すみません。また、教授の歌では鳥撃墜の時「少し低いっ!」とか言っていたような気がしますが、前楽の時よりはしっかり高音が出ていたと思います。教授、客席へのカーテンコール風煽りの時に、シャガールレベッカ、マグダを1人ずつ紹介するという楽スペシャルをやってました。でも、横で一所懸命自分も自分も!と指さしているアルフはスルーされ、アルフ、泣きながら教授と共に退場していきました(^_^)。
次のお風呂シーンでは、またサラのスポンジが床下に落下。アルフ、両腕を後ろに振り上げてとおっ!と飛び降りてスポンジ拾ってました。その後のサラの色仕掛けに動揺する浦井アルフは、何故か身体の前でスポンジを両手でぐるぐる回し。前楽の時書き忘れてましたが、ここで自室のドアを開けて待っている時、育三郎アルフは上着を脱ぎかけてそわそわしてました。
そしてコウモリ伯爵登場。ここでも力強く艶々の「お前を招待しよう」を聴かせてくれましたが、やっぱり飛び去るタイミングを気にしてどこか段取りくさい伯爵なのです。そしてやはりサラの真正面では伏し目気味(^_^)。
アルフとサラのデュエットが綺麗に決まり、浦井アルフが「スポンジだね!……グフフフフ」と可愛い下心を見せながら退場すると、いよいよ開次VDの登場です。
開次さんですが、実は身体の柔軟性や関節の可動性では、新上さんの方に利があると思っています。バレエっぽい(あくまで「ぽい」)アクションや、アクロバティックな振りが綺麗なのは、やはり新上さんです。
しかし。伯爵達ヴァンパイア一族が住まう所の「闇」の世界への親和性は、開次さんの方が圧倒的に強いと感じました。新上さんのダンスが端正でありつつも積極的に前に出て人間の精を喰らおうとする攻めのダンスだとすれば、開次さんのそれは闇の中に人間を包み込み、あるいは引き込んで同化させようとする受け身のダンス。全身に「影」としてのどうしようもなく哀しい空気感をまとっていて、それは2幕の悪夢や墓場の場面でも変わることはありませんでした。
また場面は飛びまして、マグダ襲撃後。アルフの「ろっこつ、肋骨です!」の台詞の後、教授の「杭を打つ場所とタイミングは?」の質問に、浦井アルフ、「6番目と7番目の肋骨の間、1、2の3です!」と見事に正解。すると更に教授、「この宿屋の看板娘の名前は?」と質問。浦井アルフ、少し考えた後「レベッカ!」とちゃんとボケをかまして答えてくれました(^_^)。
この後、捕まったシャガール、前楽でも暴れて育三郎アルフに「動くなー!」と怒られてましたが、楽でも激しく抵抗していました。浦井アルフが無言のまま必死に取り押さえてもまだ暴れ、手にした杭をしつこく払い続けられるのに根負けした教授が、杭を引っ込めてようやく沈静化。
客席下りでは何故か「暑いーっ!」と叫ぶ教授。ただ、上手前方だったので、そこで浦井アルフがどう返事したかまでは残念ながら後方席には聞こえず。下手通路で、教授、浦井アルフが転ぶのと一緒に転がされてました。
城門が開いて登場した伯爵は黒々とした闇のオーラで満々。前楽では「ハハハハハハハ」と笑った時に育三郎アルフが物真似をし、それを横目でじろりと睨み付けてましたが、楽ではあまり遊びは入れていなかったと思います。クコールにすりすりされて「あぁん」と悶えるのはもう定番ですね。
そして、浦井アルフと2人きりになった伯爵。アルフに向ける眼差しも声も、終始何とも言えず官能的でディープな空気に満ちていました。その空気に圧されたのかどうかは分かりませんが、浦井アルフ、夢は成長すれば叶う筈♪で伯爵が放出したスポンジを、珍しく受け損ねていました。最後のロングトーンが太く力強く劇場中に広がって伸びていったのは言うまでもありません。幕が下りる直前のあの堂々とした背中と振り向きざまの眼光、そして高々と頭上に伸ばされた右腕と長い指を、格好ええなー、と見送った所で1幕終了。
幕間の「クコール劇場」は、クコールが「蛍の光」に乗せてお掃除。そして「クコール劇場全36回完」のプラカードを掲げながら、客席からのプレゼント2つほどを抱えて去っていきました。

……何だかここまででかなり長文になってしまいましたので、2幕以降の感想は「2幕」篇で書かせていただきたいと思います。(続く)