日々記 観劇別館

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『イーストウィックの魔女たち』感想(2007/10/21ソワレ)

ダリル・ヴァン・ホーン=陣内孝則 ジェーン・スマート=涼風真世 スーキー・ルージュモント=森公美子 アレクサンドラ・スポフォード=マルシア フェリシア・ガブリエル=大浦みずき クライド・ガブリエル=安原義人 ジェニファー・ガブリエル=黒木マリナ マイケル・スポフォード=中川賢 フィデル=及川健 少女=小此木麻里

8月末以来ほぼ2ヶ月ぶりに帝劇に出向き、『イーストウィックの魔女たち』を観てきました。
モラリストの女傑フェリシアが支配する田舎町。退屈な日常に突然降り立った悪魔ダリルが、いい年(中年とも言う)の女性3人組を誘惑したことに端を発する騒動を描いたのがこの物語。
ストーリーはいかにもアメリカ的なブラックジョークが散りばめられていました。悪魔の概念が実に即物的であっけらかんとしていてステレオタイプなのが笑えました。でもその乾いた味わいが却って怖くもあるわけで、そう言う意味でラストシーンの暗示も大変ぞっといたしました。
あと『イーストウィック』で良かったのはダンスですね。群舞シーンが結構あって、アンサンブルのダンスも綺麗に揃っていて堪能いたしました。それから、3人組のフライング。1FのK列のセンターブロック下手寄り通路側という席だったので、低空飛行のモリクミさんなんてすぐ2、3列前を飛んでいる状態で、かぶりつき状態で楽しんでしまいました。

今回前評判を訊いて戦々恐々と構えていたのは、ダリルを演じる陣内さんの歌。実際に聴くと、確かにやっぱり歌唱力はちょっと、と思いましたが、歌の力で観客を納得させるよりもお下品かつ極悪非道に町をぶち壊し、物語を引っかき回して去っていくのが至上のような役回りだったので、事前に覚悟していた程には気になりませんでした。あの口八丁手八丁の軽妙にして酷薄な無責任男ぶりを、陣内さん以外の「歌える」役者さんで誰が演じられるか?というとそうすぐには思いつきませんし。強いて挙げれば川崎麻世さんとか、あるいはありし日の元祖無責任男・植木等さんぐらいでしょうか?でもやっぱり歌はもっと上手いに越したことが無いです。

女性3人組の中ではやはりルーシー役のモリクミさんの歌が頭3つ位抜きん出てました。一見楽そうに全身から無理なく声を響かせられるのって今回のキャストの中では彼女だけだったと思います。
マルシアさん演じるアレックスは前回まで一路さんが演じていたそうですが、とてもそういう匂いが感じられないほどに役柄を自分のものにされていました。1幕でダリルの手にだんだん落ちていく様子なんて、実に色気むんむんでしたし。歌も粘っこくパワフルで、ジキル&ハイドのルーシーを少しだけ思い出しました。
ジェーン役の涼風さんも頑張ってましたが、どうしてもさばさばした持ち味で、フェロモンは結構薄目なのです。でも、ダリル使用前・使用後(^_^;)の変貌ぶりの演技は流石でした。

しかし今回の私的収穫は大浦さん演じるフェリシアのダンスです。パワー満タンのダンスで堂々センターを務め、強烈なモラリストぶりをこれでもかと見せつけてくれました。背丈もあるし睨みも利いているし、これでもっと歌える方だったら『レベッカ』のダンヴァース夫人なんてやって欲しかったと思っています(あくまで歌えればの話)。2幕の後半登場場面が無いのが実に惜しかったです。
にしても、どうしてフェリシアとあの旦那様が夫婦になったんでしょうね。きっと若き日のフェリシアが一方的に惚れ倒して、策略使いまくりで無理やり、ということなんではないかと想像して楽しんでました。しかし、フェリシアはともかく旦那様までもがあんな結末に、というのはかなり気の毒です。
あと、終幕後の行く末が気になったのは、若者カップルのジェニファーとマイケル。一見元の鞘に収まったようでいながら不安要素はてんこ盛りです。そもそもおば様3人組があんなになっている以上、ジェニファーだけ平穏に暮らせるとは到底思えませんけれど。

イーストウィック』、当初今回のみの観劇予定でしたが、思いがけず来週再び観に行くことになりました。多分、今回気づかなかった点などが出てくると思うので、とても楽しみです。