日々記 観劇別館

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『レベッカ』シアタークリエ初日感想(2019.1.5 18:00開演)

キャスト:
「わたし」=平野綾 マキシム・ド・ウィンター=山口祐一郎 ダンヴァース夫人=保坂知寿 フランク・クロウリー石川禅 ジャック・ファヴェル=吉野圭吾 ベン=tekkan ジュリアン大佐=今拓哉 ジャイルズ=KENTARO ベアトリス=出雲綾 ヴァン・ホッパー夫人=森公美子

 

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 

2019年、新年初観劇は地方巡演を経てシアタークリエ初日を迎えた『レベッカ』でした。

いきなり感想にまいりますと、知寿さんのミセス・ダンヴァースの変化に良い意味で驚かされました。

1ヶ月前のプレビューの時は、「ダンヴァースを演るにはちょっと声が可愛すぎるかも?」ぐらいに思っていたんですが、本当ごめんなさい! 知寿ダニーの高音から重低音まで自在に操る歌声の圧がとにかく凄くて、心臓を締め付けられそうに苦しくなりました。そしてあの目力。今回の席が13列どセンターという良席だったこともありますが、知寿さんの強烈な目力がバシバシと飛んできてかなーり怖かったです。

ダンヴァースは後半で信じていたものに少しずつ裏切られてヒビが入って崩壊していく分、前半では狂信を感じさせつつヒロインにとってぶ厚い壁であって欲しいので、知寿ダニーの変化は大歓迎です。

本日のヒロイン、平野さんは前半、涙の印象が強いです。

特にマキシムに求婚されてぽろぽろと涙を流す場面。マキシムが涙を拭っても重ねて大粒の涙が頬を伝い、更にそれをマキシムが拭ってあげていて、マキシムの温かさがたっぷり伝わってきて良かったです。

2幕序盤の平野Ichの怯え方が非常に激しく、それに輪をかけて知寿ダニーが最強の圧で粘っこく迫ってくるので、かなり息詰まる展開になっています。なので知寿ダニー、本当は突き飛ばさなくてもあの圧と目力だけで十分ヒロインを追い詰められると思うのですけれども。

2幕にはヒロインとダンヴァースのデュエットナンバーが2曲あり、いずれも平野さんと知寿さんの声が綺麗にハモっていて気持ちいいです。1曲目と2曲目とでは2人の心理が逆転しているわけですが、知寿ダニーは表情はポーカーフェイスでありながら、2曲目では歌声に微かに心理面の脆い綻びが漂っているのがさすがです。

ダンヴァースという人物について面白いと思うのは、「誰がレベッカを殺したか?」は割とどうでも良くて、むしろ「あのレベッカが易々と自分が死ぬような状況を招くとは思えないので真実を知りたい」と考えている度合いが高そうなところです。レベッカへの執心のあまり価値観が壊れているところが大きいのかも知れませんが、その思いの純粋さゆえに真実を知った時に心が耐えられなかったのだろうと思います。

……というような彼女が達した心境は、真実を知った直後の哀しいソロナンバーからも十二分に伝わってくるので、私、あの高笑いは本気で要らないんですが、もう今季の演出として定着しちゃったんですね😓。残念。

なお知寿ダニーを観ていて考えたのは、祐一郎さんと知寿さんは同じタイプの役者さんなんだなあ、ということでした。いずれも、その歌声に役の人格や感情ばかりか、その役の来し方や担う世界観まで何もかもを載せて観客を魅了する、稀有なミュージカルアクターだと思うのです。

その祐一郎マキシムは、客席にリーヴァイさんほかウィーンの皆様がいらしたこともあってか、どことなく張り詰めた緊張感を漂わせておりましたが、声は絶好調でした。私的には、告白ソングその他で低い音階からすっと高音を聴かせてくれる瞬間がたまりません😊。

マキシムについては、「幸せの風景」でヒロインを思って歌う歌声が、時にウイスパーボイスを交えながら優しく温かさに包まれていたので、観ていてかなり癒やされました。

マキシムは、ある秘密のせいで心のどこかがずっと何かに絡め取られ、元々の気性の激しさゆえに余計にしんどい影を背負いながら生きている人です。それでも途中でヒロインとチェスゲームで戯れるほんの一瞬は、心底幸せそうで見ていて救われます。

2幕でレベッカの大きな影に取り憑かれ、蘇る屈辱に震え自らの所業やヒロインとの幸せが終わるかも知れないことに怯えながら告白を絶唱し、それでも変わらぬ愛を告げる妻を抱きしめる(すがりつくのではなく対等に!)マキシム。それを見て、プレビューの時にはどうもマキシムがヒロインの純粋さを利用したような印象が抜けなかったのですが、今回は、彼にとって若妻は本当になくてはならない存在となったのだということが伝わってきました。

マキシムはレベッカの呪いからの解放と引き換えに、彼のアイデンティティそのものとも言える「あるもの」を永久に失ってしまいますが、失意の中でもきっとそばに寄り添う妻だけは20数年変わらずに彼の魂を癒し続けているに違いない。ラストのド・ウィンター夫妻のツーショットに至るまで、自然にそのように思いました。

ところでクライマックスの駅の場面でド・ウィンター夫妻、初演や再演の時はあんなに何度もキスしていなかったように思うのですが。平野Ichだけなのか他の2人もそうなのかが分からないので、今度気を付けて見てみます。

他にも「げきぴあ」の禅さん&圭吾さんのインタビューを読んだ後に初日を見たら、フランクの理想のビジネスパートナーぶりや、対するファヴェルのヒロインを屁とも思っていない態度が良く理解できたことなど、色々書きたいことはあるのですが、この辺にしておきます。

カーテンコールはキャスト(平野さん、知寿さん)、演出家山田さん、そして作曲家リーヴァイさんからご挨拶がありました。

自分は記憶力が悪いので挨拶の内容は他の観劇ブログ等をご確認いただければと思いますが、リーヴァイさんが、

「私の友人ユウイチロウさん、チズさん、アヤさん、ゼンちゃん、コンちゃん」

と日本語でプリンシパルキャストのお名前を口にされていたのが印象に残りました。

次回の自分の『レベッカ』観劇は13日昼の予定です。初・桜井玲香さんを楽しみにしています。