日々記 観劇別館

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『マディソン郡の橋』プレビュー初日感想(1幕編・ネタバレあり)(2018.2.24マチネ)

キャスト:ロバート=山口祐一郎 フランチェスカ涼風真世 マリアン=彩乃かなみ マイケル=石川新太 キャロライン=島田彩 チャーリー=戸井勝海 マージ=伊東弘美 バド=石川禅 others=加賀谷一肇

待ち望んだ『マディソン郡の橋』プレビュー初日(シアター1010)を見てまいりました。
自宅から比較的北千住は近いので、いつもここでやってくれないかなー、と思いつつ劇場に向かう途中、『レベッカ』再演の報が入り驚喜。1010でもプレビュー公演を行うということでロビーにチラシが置かれていました。

『橋』は原作未読、映画も未見なので、「僅か4日間、カメラマンと農婦の一生分の本気の生涯秘密の恋」という雑なあらすじと、「映画ではイーストウッドとストリープが演じた」というデータしか知らない状態で観劇に望みました。

以下の感想ですが、1幕をだいぶネタバレしてます。未見の方はご注意ください。
長文なので、2幕は別記事にします。そちらでは核心に触れるネタバレは避けるつもりです。

涼風さんの冒頭のソロは若干歌詞が聞き取りづらい所がありましたが、戦争に負けた国の女の子が覚悟の上故郷を後にして戦勝国の兵士に嫁ぎ、海を渡り嫁ぎ先に着いてみたら広大なトウモロコシ畑が広がるど田舎だった、そこでただ日々を必死に生きてきた、というポイントは理解しました。

そこから観客はアメリカの畜産農家、しかもこれから親子3人で大事に肥育した牛を品評会にかけるために出かけるというのに、頑固親父バドと難しい年頃の子供達との間で何やら殺伐と言い合いになってしまっている現場に突如放り込まれます。
ちょっとここ、がちゃがちゃとやかましいんですが、禅さんの、アメリカの荒々しい軍隊帰りの頑固親父(でも奥さん大好き。束縛などではなく、ただシンプルに大好き。)という貴重な役どころが見られますし、フランチェスカ(通称フラニー)がこれから経験するとても非日常的な時間との対比という意味での普段生きている日常の紹介ですので、少しだけ我慢です。

ラニーの非日常への扉を開ける存在となるカメラマンのロバートは、この地方での最後の撮影ポイント、屋根のある橋(ローズマン・ブリッジ)を見つけられずさ迷う旅人として登場します。
ラニーが案内を申し出てドライブしている時の、他人行儀な会話から、ロバートがふとフラニーの故郷ナポリの話をした瞬間からフラニーの心の何かが揺らぎ始めるまでの2人の応酬が絶妙です。

目ざといお隣の奥さんマージが、一見妻の言動に無関心な夫のチャーリーとシットコム的なコントを繰り広げながらよそ者を気にしたり、旅先からバドや子供達がワーワーギャーギャー電話をかけてきたりする割には、ロバート、すんなりといい感じにフラニーの家にお邪魔して、2日ぐらいかけて徐々に打ち解けていきます。
不思議と言えば不思議ですが、この辺りは細かいことに突っ込んだら負けのような気がしたので、早々にあまり気にしないことにしました。

そして何故か、ロバートがまだ打ち解けなくてフラニーの前でぎくしゃくと振る舞っている場面の所々で客席から笑い声が。確かに長身の山口さんが長い手足をおたおたさせている姿が何だかコミカルで、どこか「素の姿」も連想させるような感じで面白かったのですが、ここは笑って良かったんだろうか(^_^;)。

1幕では話が色々な時間軸に結構目まぐるしく飛びます。
一見頑固で口数少ないバドが困窮した農家仲間に見せた気遣いと助け合いの心のエピソード。
バートの回想として示されつつも相手マリアンの視点の言葉(歌)として語られる、互いの孤独をついに分かり合えないまま決裂してしまった最初の結婚のこと。
そしてフラニーがこれまで誰にも語ってこなかった、戦火により故郷で失ったものと、ロバートのおかげで知ることのできた思いがけず変わらぬ故郷のこと。
これらのエピソードの周到な積み重ねにより、全く異なる人生を送ってきた2人が、心に封じ込めてきた孤独を解き放った時に強く惹かれ合ったのは必然である、という説得力のある展開になっていました。

そして何と言っても涼風フラニーが美しい!
途中から、序盤からまとっていた白シャツにジーンズを脱いで、さわやかおしゃれなワンピースに着替えるのですが、このワンピ姿が本当に可愛らしく、さすが妖怪、抜かりがないぜ! と本気で恐れ入っていました。

で、1幕の終盤に至っていよいよロバートとフラニーが親密な関係になるわけですが……。
ラジオから甘いダンスナンバーが流れ、惜しい所で電話が来て一旦中断するなど一呼吸入れつつ、2人の演技だけでなく歌声(曲名:Falling into you)が確実に艶を増して濃密になっていくのを緊張しながら見守っていたので、かなり呼吸困難気味になりました。
いや、普通のその辺にいそうな現代人の役で*1、元恋人に死を望まれも恋人の身代わりで監禁もされず普通に「大人の」恋に落ちる役の山口さんというのはかなりレアでしたのでつい(^_^;)。

ちょっと長くなりましたので、次の記事に続きます。

*1:美形で流れ者で天涯孤独のカメラマンは普通にその辺にはいないと思いますが、ほぼ現代に近い時代に生きるホモ・サピエンスという意味です。