日々記 観劇別館

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『レディ・ベス』初日感想(2017.10.8ソワレ)(その2)

初日、新演出の感想についてはこちら→『レディ・ベス』初日感想(2017.10.8ソワレ)(その1) - 日々記 観劇別館

書きそびれているうちに次の観劇日が巡ってきそうなので、個々のキャストの感想だけでも簡単に記しておきます。

花總ベス。その1にも書きましたが、女王姿がフィットし過ぎるくらいはまっています。はまり過ぎていて、逆に彼女が一時的に恋愛や心身の自由に心を寄せたとしてもそれは仮初めに過ぎず、女王となることが宿命づけられているようにしか見えません。
育三郎ロビン。何でしょうね、彼の奇妙な安定感は。そしてどう考えても流れ者になる前に結構苦労している筈なのに、流れ者生活が心から楽しそうなのであまりそう見えないのが凄いです。あと初演の時は育三郎ロビンがベスを子供の世界に留めようとするピーター・パンのように見えて、今回もそういう所はあるのですが、今回の育三郎ロビンはもう少し達観しているように見受けられます。
平方フェリペ。初演よりも色気が倍増したように見えたのは気のせいだけではないと思います。再演ではフェリペの出番が減らされてしまいましたが、この色っぽい平方フェリペが最後にベスに軽く誘いを掛ける場面などを観たかった気がします。
なお、チケ取りでキャスト組み合わせを上手く配分できず、育三郎ロビンと平方フェリペを観るのは今回のみなのです。残念。

ガーディナー猊下。禅さんのメイクが濃過ぎてビビりました(^_^;)。なんだか最初から顔色が悪く苦そうな薬を飲んでいて、猊下、ベスを消す計画に加担していなくても早晩寿命が来ていたんじゃないかと思われます。初演ではお稚児さん趣味を臭わせていてルナールに迫るような仕草がありましたが、今回はその辺の設定はカットされたようです。
吉野ルナール。とにかく格好いい! そして鬼畜。ルナールに関しては初演からの大きい変化はなさそうでした。時々見せてくれるバトントワリングがツボです。
未来メアリー女王陛下。メアリーについては事前の小池先生インタビューでも語られていたとおり、コミカル要素はぐっと減って「悲劇の女王」の面が強調された演出に変更されています。ただ未来メアリーの場合、実母の雪辱を果たすためなら自分はどうなろうと構わない、という意思の表現がポジティブなので、最後のベスへの独白に至ってもあまりお涙頂戴には流れていない感じでした。
和音アン。実は初演の時は若干得体の知れない不気味さを覚える時もありましたが、今回はそうでもなく。ベスの中の何かを無条件に信じる人、という意味でアスカム先生と表裏一体の存在として描くことに今回は成功していると思います。
なお、アンは途中まではベスの中に首切り役と1セットでインプットされてしまっているようですが、最後には恐らく分離されたと思われます。めでたし。
涼風キャット。プロローグの説明場面(ここちょっと紙芝居っぽい(^_^;))に出番が追加されていて、ベスが本当に小さい頃から一緒にいたことが分かるようになっていました。
「大人になるまでに」の凛とした歌声と立ち居振る舞いも健在。アンやアスカム先生よりもっと穏やかではありますが、ベスを信じ無償の愛で支え続けるキャットの生き方が体現されているナンバーです。

そして、山口アスカム先生。星々に保証されたベスの王の器への強い信頼は3年半前から一貫していますが、ベスに対する姿勢がやや変化したように感じられました。
具体的には、初演ではどこかに、
「信じていますから、ゆめゆめ道を踏み誤らないでくださいね。間違えたら先生悲しいですよ」
な空気が漂っていましたが、今回は、
「まあ、我がベス様なら必ず賢明な判断をされるでしょうから、ご自身の言葉できちんと彼にお話ししてくださいね」
という感じの、有無を言わせぬ絶大な信頼感が伝わってきました。それでも決して強制的、圧力的な雰囲気をまとうことはなく、歌声も台詞回しもどこまでも紳士的で暖かさすら湛えているのが山口アスカム先生の恐ろしい所です。
そのダンディーで知の宇宙を無限に内包していそうなアスカム先生が、カーテンコールでは満面のほんわか爽やか笑顔で舞台に現れるのがまた何とも言えず。あ、これは本編と関係ないですね。

最後に、メインキャスト以外で気になるのはやはり中山昇さんのワイアットでしょうか。出番はさほど多くないのにさすがの強烈な印象を残してくれています。
ただ彼の志を踏みにじられるむごさは伝わってくるのですが、その他の民衆の皆様の怒りや祈りにベス自身が直接触れる機会は実は1幕の居酒屋の場面しかないので、ええと、ベスの選択に彼らの思いは反映されてるのかなどうなのかな? とちょっともやもやしないでもないです。
あと、ロビンは最初のプロテスタント信者の検挙や居酒屋、ベスのウッドストック移送の場面で民の声をたくさん耳にして共感もしている筈なのに、いくら恋愛感情を抱いたとは言え何故あえて彼らの期待の星ベスを連れ出そうとするのかと、そこはずっと心に引っかかっています。もちろん、王冠を頂くのはとても重大で過酷なことだし、期待が大きければ失敗した時の失望も大きいだろうから、そんな大変な目に愛する人を遭わせたくない、というのは分かるのですが。そこは自分がロビンにあまり共感できない所なのです。

小池先生にリーヴァイさんに、と盛りだくさんだったカーテンコールのことなども書きたい所ですが、感想その2はこれくらいにしておきます。