日々記 観劇別館

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『エドウィン・ドルードの謎』初日感想(2016.4.4ソワレ)

キャスト:
支配人/トーマス・サップシー市長=山口祐一郎 エドウィン・ドルード=壮一帆 ローザ・バッド=平野綾 ネヴィル・ランドレス=水田航生 ヘレナ・ランドレス=瀬戸カトリーヌ クリスパークル牧師=コング桑田 ジョン・ジャスパー=今拓哉 プリンセス・パファー=保坂知寿

シアタークリエにてミュージカル『エドウィン・ドルードの謎』初日を観てまいりました。
上演時間は休憩込みで3時間。プレビュー後に削られたと思しき場面もあり*1、テンポは全体に良くなっていたという印象ですが、それでも上演時間は長い方だと思います。初日は18時30分開演、21時30分終演というかなり遅い時間でしたので、終電に間に合わなくなるのかカーテンコールの途中で抜けていくお客さんがちらほらいらっしゃいました。

今回、プレビューを観て既に全体の構成が分かっていたためか、前回よりも肩がこらずに余裕を持って楽しめたように思います。
キャストの皆様も、「初日」や「思いがけない展開」への緊張感こそあるものの、どこか適度に力が抜けていて良い感じになっていました。
こういう一見ゆるゆる、ぐだぐだですが進行はきっちりと管理されている必要があり、崩しすぎても真面目すぎてもいけないという内容の演目を日本向けに上手く料理した演出家さんももちろん凄いですが、その演出に応えるキャストの力量もまた素晴らしいと思います。

皆様それぞれに良かったですが、特に印象に残ったのは楽屋が綺麗に整頓されていることでミュージカル界で有名な*2、今さんでしょうか。ローザへの横恋慕やら何やらを色々こじらせて変態度がエスカレートした紳士役を楽しみながら熱演している雰囲気が伝わってきて、観ている側も楽しかったです。
あと、知寿さん。粋であだなダンスから名探偵コナンのパロディの早口言葉までこなす「プリンセス、パッファー!」の巧みさで舞台をピリッと引き締めてくれています。
逆にユルいお笑いの担当は、TdVの初日にアドリブを飛ばしすぎてプロデューサー氏に怒られたというコングさん。何故かスポットライトを避けて立ってしまう牧師様は、舞台稽古で台詞を噛みまくってヘレナにマジ怒りされていたそうですが、今回めでたくヘレナと愛のデュエットを熱唱していました。もっとも「歌稽古以来」の組み合わせだったそうで、「舞台稽古で噛みまくった」と突っ込まれたそばから早速歌詞を噛んでいましたが(^_^;)。

この演目では、プリンシパルにもアンサンブルにも等しくスポットが当たるのが魅力の1つですが、今回は高原さんのバザード(牧師の下で働く役者・演出家志望の青年)が大活躍でした。
実はなかなか名曲な「主役は他の人」でも堪能させてもらいましたし、後半は探偵姿でも楽しませてくれました。

そしてエドウィンでは観客にもスポットが当たるのでした。そういえば客席参加のイベントのうち一番初めに行われ、観客が舞台上に立つゲームで、初日に舞台に立ちその投球コントロールの見事さで客席を爆笑の渦に巻き込んでくれた方は、どうも娘役のジェンヌさんでいらしたようなのですが、いかんせん宝塚に詳しくないのでお名前が分からず残念です。

……あ、山口さんのことを書くのを忘れていました(何と言うこと!)。「シルクハットを被ったら身長が2m超える」かの方があれほどまでに舞台で走り回り、踊りまくり、そして様々な声色でしゃべくる演技を披露する機会は後にも先にも滅多にないと思います。もちろん歌もありますが、圧倒的に地の台詞の方が多いです。山口さんと言えば歌声を期待する向きが多いかも知れませんが、台詞の聴き取りやすさ、キラキラと輝く豊かな表情、そして決して軽快ではないながらも激しいダンスステップに果敢に挑戦される姿勢など、歌以外にも魅力はたくさんあるんだぞ、ドヤァ!という気持ちでいっぱいです。
最後にカーテンコールで、客席を手で静めた上で、でっかいウィスパーボイス(と書くと嘘のようですが本当にそのような発声でした)で「ありがとうございました!」とご挨拶するお声に、万感の思いがこもっているように感じられました。

ちなみにこの演目においては「犯人」は投票制で決まるため、その日の犯人の名を書いてもそんなにネタバレにはならないと思いますので、書いておきます。
今回の犯人はネヴィルでした。ラストのカップルのデュエットは前述のとおりヘレナと牧師様です。
前回(プレビュー初日)は、犯人=ローザ、カップルデュエット=ヘレナ&ダードルズという組み合わせだったので、意外と組み合わせは変わるものだな、と実感しました。
一度で良いので「実はサスペンスの法則に反してジャスパー氏がやはり犯人だった」という展開も観てみたいものです。

最後に、『エドウィン・ドルードの謎』というお芝居には「ウィットに富んだ」という言葉が最もふさわしいと思います。ただ、観る自分自身が即物的でウィットの欠片も無い人間なので、気の利いた言葉でこのお芝居を括ることができないのが惜しいところです。あまりノリがよろしくなくて申し訳ございません。

*1:投票集計中のアンサンブルさんのコントなど。

*2:という支配人の台詞があるのです。