日々記 観劇別館

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新生『エリザベート』演出変更点(ネタバレ注意)

新生エリザを観てから一週間。
ちょっと間が空いてしまいましたが、忘れないうちに、気がついた範囲での演出の変更点とそれらへの一言感想を記しておきます。
と言っても1回しか観ていませんので、他のキャストでは細かい動きが異なる可能性があります。

以下、思い切りネタバレな上、少々毒が入っていますので、未見の方はご注意ください。

1幕

  • 冒頭の死者達の衣裳が旧版のワカメっぽい何かから、ボロ切れ、綿埃っぽい何かに変更されていました。
    実は雄大ルドルフが登場した時、頭からも綿埃を被っているので、最初誰だか分からなかったという(^_^;)。
  • トートの降臨方法がゴンドラから黒い翼に変更。トートの身体にも羽根模様のタトゥーが追加。
    黒い翼はTdVとイメージが被ってツボった根源です。但しTdVと違って翼は折りたたみ不可のようで、主の身体を外れた後は広げたまま天空に戻っていきました(^_^;)。
  • シシィの落下場面が映像から影絵になってましたが、ストーリーを知らないと「木から落ちた」ことがちょっと分かりづらいかも?
  • 全体を通して、ストーリー上の見せ場が舞台上の高い段の上にセットされていました。八百屋舞台ではなく段差があるステージ上です。客席の段差の少ない帝劇では後列からも観やすくなり、良い変更だと思います。
  • 結婚式。大司教とトートが完全に分離されていました。大司教にシシィが誓いの言葉を述べるのをトートが客席から眺めて高笑いするという流れです。
    ……で、ここまで変えといて何故「トイレットペーパー」は残したんでしょ?(^_^;)
  • 演出とは少し違いますが、ルドヴィカの演者が替わったことで、彼女の性格付けに「押しの強さ」が加わったという印象です。間違いなくあのゾフィーの姉妹だと思います。
  • 披露宴場面でのマックスとゾフィーの掛け合いで、以前はワイングラスを手にして、歌い終わると同時に給仕のお盆にグラスを置いていましたが、新演出ではグラスがなくなっていました。個人的には好きな演出だったので、ちょっと残念。
  • 「私だけに」の途中で、客席に背を向けて座り込むシシィの目の前に、謎のモノリスが立ち上がってきていました。モノリスにシシィが這い上がろうとするも、傾斜するモノリスから虚しくシシィがずり落ちていく構図。このモノリスのモチーフは後から再登場します。
  • シシィの最後通告。トートがシシィの背後から、ぬばぁと現れていました。あまり色っぽくなかったのはトートが井上くんだったが故でしょうか*1。ちなみにシシィから出てって!と言われた後はトートは羽根ペンを投げるなどはせず、静かにロウソクを吹き消して闇に消えて行きました。
  • 役者さんの登場位置はかなり細かく変更されています。例えば1幕ラストの「私だけに(リプライズ)」で白ドレスのシシィの登場する階段の位置が、下手からセンターに変更されていました。確か以前に見た初演の映像ではやはりシシィがセンターから、フランツとトートが上手と下手からそれぞれ登場していたと思います。ただ、今回のトートはシシィの背後から登場していたので、完全に初演返りというわけではなさそうです。

2幕

  • 戴冠式後に皇帝夫妻が乗る馬車がなくなっていました。正確には、馬車っぽい台に乗ってお手振りしていますし、鞭の音も響き渡っていましたが、あくまで馬車に見立てた台であり、馬車ではありません。
  • 精神病院。ヴィンディッシュの攻撃が従来の傘チョップからマフラーチョップに変更され、若干生ぬるくなったような気がします。また、シシィがヴィンディッシュの魂の自由に嫉妬している間に、ヴィンディッシュは患者達に崇められてドヤ顔しているので、落ち込むシシィとのギャップが露骨過ぎるくらい露骨でした。
  • マダム・ヴォルフのコレクションが「額縁ショー」(若者は知ってるのでしょうか、これ?)に変更されていました。
  • HASSで虐められているユダヤ人のビジュアル。以前も足蹴にされているユダヤ人男性はいた筈ですが、今回のような黒いシルクハット&ヒゲではなかったと思います。そしてハーケンクロイツの旗は押し付けがましくセンターに落ちてきていました。
  • 「闇が広がる(リプライズ)」で井上トートはえっちらおっちらハシゴを降りてくることはないだろうな、と思っていましたが、そもそも新演出ではトートはハーケンクロイツの旗の陰から登場するので、ハシゴ自体ありませんでした。
  • 独立運動の場面でも馬車が省略されていました。トートとルドルフの演技は明らかに馬車に乗っている風でしたが、初見の方が分かるかどうか心配です。
  • 独立運動もう1点。井上トートはもっと動く演出になるのかな?と思っていましたが、そうでもありませんでした。逆にルドルフは(元々この場面では動いていましたが)アクティブに踊っていました。
  • マイヤーリンクの展開ががらりと変わっていました。「ママも僕を見捨てるんだね」の後にトートが下手奥に座って「死にたいのか?」とルドルフに語りかけ、その瞬間から死への段取りが始まります。死のキスを求めるのはルドルフからに変更。吹っ切れた表情で能動的に引き金を引くルドルフ。トートダンサーの手で棺に納められるルドルフ。これも多分初演返り。宝塚版もちょっと入っているかも?ただ、葬儀の間、棺の中にルドルフがとどまっているかは不明です。
  • ルドルフの棺にとりすがり泣き崩れるシシィ。棺の蓋が立ち上がると、それは見覚えのあるモノリス。そしてモノリスの上辺を両手で掴んでぬばぁと現れるトート。
    ……ええと、実は私、ここで何故か何の脈絡もなく「あ、M!のコロレド猊下のおトイレだ!」と連想してしまったんですね(^_^;)。トートのポーズが、どことなく事を成す前に衝立の向こうから客席を覗き込む猊下を連想させましたので。この時ばかりは自分の妄想力の暴走を呪いました。
  • エピローグのトートの衣装が白装束(所謂白トート)に変わっていました。これも先祖返り、ではなく初演返り。そしてシシィはウィーン版よろしく自ら黒装束を脱ぎ捨て、白ドレスに「脱皮」していました。
  • 最後はシシィは棺に納められません。ただ眠るだけ。そのまま眠り続けているのか、黄泉で静かに暮らしているのか?あのまま黄泉で大人しく過ごしているとはとても思えないのですが……。

気がついた変更点とそれへの感想は以上です。
旧演出より新演出が良くなった(悪くなった)かどうか?は良く分かりません。少なくとも悪くはなっていない気がしますし、「善し悪し」というよりは「前とはアレンジが違うけれど、こっちも悪くないよ」な感じです。
書いていたら徐々にキャスト替わり時の芝居の違いが気になってきましたが、懐の事情もありますし、我慢我慢……。

*1:すみません、何故か私はトートに限らず井上くんの演じる役にあまり色気を感じたことがないのです。