日々記 観劇別館

観劇(主にミュージカル)の感想ブログです。はてなダイアリーから移行しました。

『ロイヤルホストクラブ』感想(2013.4.14ソワレ)

キャスト:
白金豪=今拓哉 朝比奈ルイ=川島なお美 芥川直木=進藤学 花咲愛人=桜木涼介 維舞聖夜=松原剛志 五十嵐・ムーンウォーク・ジョニー・ジュニア=城田純 谷村昴=幸村吉也 香坂耕介=冨森ジャスティン 川端ゴロー=坂口涼太郎 鮫島鉄矢=林野健志 白鳥翼=北村健人 服部忍=川口倫裕 本郷猛=冨田浩児 諸星団=大野朋来 大海原裕次郎=岡智

北千住の「シアター1010」でミュージカル座により上演された本作を観てまいりました。
以下、例によりネタバレあり感想なので、未見の方はご注意を。

一応「ミュージカル・コメディ」ということでしたが、歌と踊りの比重は1幕の方が高く、2幕はどちらかと言えば台詞劇のウェイトが高かったです。
ストーリーは、歌舞伎町の老舗ホストクラブ「パラダイス」を舞台にして、指名の取れないダメホスト4人組(途中で1人加わり5人組に)の成長を中心に、ホスト達の駆け引きとドラマを描いた青春人情物語でした。音楽よりもダンスの方が後味に残った作品です。
ダメホスト達の作戦会議やホスト修行の場面は青春スポ根コメディっぽいノリでした。バレエ修行に限れば『宝塚BOYS』も連想。豪派閥に入れず他ホストのヘルプに付いて学べない彼らに接客指南をするのが、男装の麗人(オナベさん)という展開が個人的には楽しかったです。
曲は、1幕の演歌調の「雨」を除き実はそれほど印象に残っていないのですが、ダンスアクションは結構激しい振付だったと思います。
特に白金豪こと今さん。登場した瞬間、ホスト姿のあまりのはまりっぷりにツボって、客席で笑いをこらえるのが大変でした。立ち居振る舞いはヒロミ・ゴー(眉間にシワもw)、ダンスはトシちゃんかと思いました(すみません、そういう世代なのです……)。回転ジャンプに足上げと動きは激しいのに、姿勢の良さ故か、軽快さよりもどこかストイックさを感じさせるダンスでした。
豪の役どころはNo.1ホスト。店内派閥も率いて鼻持ちならないのだけど、何故か子分達に教えるのは「洗顔の仕方」や「風呂の入り方」ばかりという所がコミカル。
余談ですがこの洗顔指南場面では、スポンサーの「ドクターシーラボ」製品が堂々と商品名入りで登場していました。今さんの説明の淀みなさが何とも面白おかしかったです。このドクターシーラボ、開演前に座席に試供品セットが置いてあるという太っ腹ぶり。パンフやロビー広告だけでなく、本編にまで出張してくるのは珍しいのではないでしょうか。
話を豪に戻しますと、途中でダメホスト5人組の活躍でNo.1の座が危うくなると、自らの手を汚さずに嫌がらせをしてしまったりもしますが、最後は何だかんだで新人の頃の優しさと本音の愛情を取り戻し、美味しい所を持って行きます。お姫様抱っこもあり(^_^)。
豪にのめり込む高名なピアニストのルイ役は、川島なお美さん。開演前にパンフで、ピアノ一筋に生きてきて純粋培養されたが故に、ふとしたきっかけでホストの豪に本気になってしまった、というルイさんの設定を読み、
「えっ、この方が演じたらそれって激しくカマトトにならない?」
と要らぬ心配をしていましたが、全くの杞憂でした。と言うのもルイさん、ホスト遊び以外の部分では至極真っ当で堅実で大人な社会人という人物設定なので。そう言う人が真っ当なままホストにのめり込み、金銭感覚等色々な物が壊れていく様子はかなり痛々しいです。しかし終盤、彼女の「愛」が、貢ぎ、見返りを受けるのを待つだけの「受け身の愛」から、相手を窮地から救い守るための主体的な「戦う愛」に変貌していく姿には好感が持てました。
ダメホスト達もそれぞれに良かったです。半数以上の役者さん方は元々踊れる方達で、1幕クライマックスの見せ場のダンスもかなり見応えがありました。ストーリー的にも、突然No.1の座を得た心優しい直木を皆で盛り立てていくのが楽しかったです。2幕の豪との決戦では「こうなる前にもっと早く気づけよ直木くん!」と少しだけ思いましたが、みんな若いし、まあ、いいか(^_^;)。
5人組の中で特に目を引いたのは、ジョニー役の城田さん。城田優くんのお兄さんですが、弟さんより若干癖のある美貌で、おどおど、ヘタレな実は35歳(笑)の元リーマンをコミカルに、強烈に演じていました。ちなみに一応調べた所、ご本人の実際のお歳はまだ20代でいらっしゃいます。
社会人として見習いたいのはNo.3の聖夜でしょうか。後輩のことをべったりし過ぎず温かく見守り、分をわきまえて謙虚かと思えばピアノソロなど弾いてしまったりして(松原さん、たまに手つきが怪しかったですが(笑))、ああいう先輩になりたいです。
あと脇で良かったのは、セレブマダムの富士子やバレエ教師を演じた五大輝一さん。マツコ・デラックス風の押しの強い振る舞いで、歌も良くて、笑いを取りつつ出過ぎず、上手いなあ、と思いました。女性陣は、民子&松子の飲み逃げOLコンビ(お店の演歌ジャックもあり)やローズ&リンダのドSショーガールコンビはいずれもインパクト大でドスが利いていて良かったです。ただ女性アンサンブルのコーラスと群舞は若干弱かったかも知れません。

なお、確か、自分が観た公演が千穐楽だった筈ですが、特にスペシャルカテコなどはありませんでした。ミュージカル座作品の楽日はいつもこんな爽やかな感じなのでしょうか。