日々記 観劇別館

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『songs for a new world』(ソングス・フォー・ア・ニュー・ワールド)初日感想(2012.8.1ソワレ)

キャスト:

浦井健治 昆夏美 濱田めぐみ 米倉利紀

ほぼ3週間ぶりの観劇でした。例により海外版などによる事前の予習はゼロです。
シアタークリエという小さな劇場で、僅か4人のキャスト、音楽も最小限のバンドメンバーのみで演奏されるこの演目に、一貫したストーリーというのはありません。様々な時代、様々な人生のシチュエーションを切り取って組み合わせたオムニバス劇です。
上演時間は、20分の休憩を挟んで1・2幕が各45分ずつ。最近の舞台にしてはやや短めですが、4人のキャストがほぼ出ずっぱりな上、曲も難易度高、密度高なので、これ以上長くしたらキャスト、客ともに倒れると思われます(^_^;)。

何しろキャストが全員、歌声に力がある役者さんばかりなのが嬉しかったです。
特に浦井くん。普段の役ではあまり聴けないソウルフルな高音シャウト、そして軽やかな身のこなしを堪能しました。1幕は最初から最後までソロで通す曲がなくて少し残念でしたが、その分2幕ではたっぷりソロナンバーがありました。
そして濱田さん。一曲一曲での存在感が凄すぎます。登場して歌い出した瞬間からもう、仕草、歌声ともに光っており、耳も目も惹きつけて止みませんでした。
役割分担的には、米倉さんと濱田さんが主に現実に疲れ、あるいは翻弄される大人担当、浦井くんと昆さんが主に、時に現実に傷つきつつ基本は野心、冒険心、そして純な乙女心に生きる若者担当と言ったところでしょうか。
1幕まで観た印象は、このシナリオ、男のロマンチストぶりと女のリアリストぶりを実に巧みに表現してるなあ、というものでした。同じように逸る心を抱いていても、男は何となく心理の迷宮でまごまごしてて、女は口では色々言いつつ心はとっくに迷宮を抜け出しているイメージ。
2幕まで通して観て思ったのは、やはり人間、ロマンに生きていてもふと足下を見つめ直してみるとか、逆にリアルに生きていてもたまには根拠レスに光溢れる未来を信じてみるとか、そういうこれまでの自分にはなかったような視点で事に臨むのって、とても大事な要素ではないかということです。
「新しい世界」に入るきっかけを掴むのに最も必要なのは「希望」であり、そして真の答えはそれぞれの胸の中にある、という結論は見えていたことではありますが、分かっていてもキャスト全員が白い衣装で光を浴びて笑顔を見せてくれると、本当に安心します。
ただ、まあ、一方で極めてアメリカ的な展開と結論でもある、と思ったのも事実です。何しろ祈りと信頼と希望を全部引っ括めて象徴する存在として登場するのが、新大陸に渡る清教徒達の船や、独立戦争で兵士達の無事を祈る母親であったりしますので。

カーテンコールでは、初日なのでキャスト4人からご挨拶がありましたが、残念ながら細かい所まで良く覚えていません。でも、浦井くんはいつものようにしっかり爽やかでありつつどこかふわりと天然で、昆さんは緊張しまくりつつも饒舌で可愛く、濱田さんは大人の余裕でしなやかに美しく、そして芸歴20年、舞台歴10年の米倉さんは、どこかに照れを覗かせつつさらりと大人に決めていました。