日々記 観劇別館

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『M.クンツェ&S.リーヴァイの世界〜2nd Season〜』初日感想(2012.2.26)

キャスト:
山口祐一郎 新妻聖子 土居裕子 石川禅 山崎育三郎 一路真輝 ほか <スペシャルゲスト>パトリック・シュタンケ <司会>武岡淳一

クリエ公演は初日だけですが、幸運にもチケットを確保でき、行ってまいりました。
開演は14:00。上演時間は1幕55分、休憩20分、2幕70分、計2時間25分ということでしたが、初日ということもあり、劇場を出た時には16:45を回っていました。

まずは『レベッカ』と『M.A.』の曲で構成されていた、1幕の感想からまいります。
エリザベート』冒頭の煉獄の裁判官とルキーニのやり取りが、2000年6月の初日時の録音(裁判官=治田敦さん、ルキーニ=お馴染み高嶋さんだそうです)から再生された後、アンサンブルさん達による『エリザベート』、『M!』、『M.A.』、『レベッカ』のメドレーからスタート。その後、MCの武岡さんのご挨拶を経て、『レベッカ』の山口さんによる「幸せの風景」の歌唱を皮切りに、時々インターバルを挟みつつ次々にウィーンミュージカルの楽曲が披露されました。
山口さん、1幕では2曲歌われてましたが、マイクから声がスコーンと抜けてこない感じに聞こえたのが少し気になりました。2幕にハードなソロやデュエットが控えているので、それに向けて温存しているのかな?とも思いましたが、『M.A.』のソロ曲は歌い上げてなんぼな所がある曲なので、もうちょっとパンチが欲しかったように思います。でも、『レベッカ』からのソロ曲(実は芝居の中での位置付けとしては要らない曲だと思います)は優しい囁き声で語るように歌っていていい感じでした。
禅さんは、初っ端の『レベッカ』のフランクの曲で可愛らしく登場したので驚かされました。いえ、禅さんがかなり可愛い系なのは存じてますが、あまりにも若々しく可愛すぎる管財人さんだったので、ちょっと圧倒されてしまいました。
そして国王のソロでは打って変わってしっとりと、哀感溢れる歌声を聞かせてくれました。やはりこの方の七変化ぶりは凄いです。

一路さんの歌は久しぶりに、具体的には2006年5月以来、約6年ぶりに聴きました。『レベッカ』のダンヴァース夫人の曲は、役にならず歌っている分には聴けますが、役柄としてはあまり一路さんに合っていない気がします。ただこの辺は本当に好みですので、あまり多くは語らないことにします。

聖子ちゃんと土居さんのデュエットは、もう本当に耳が喜ぶ歌声でした。パトリックさんと聖子ちゃんについても同様。
聖子ちゃんの歌は、1幕では『M.A.』のソロとデュエットが大半でしたが、何と、『レベッカ』1幕の「わたし」のソロも歌っていました。
聖子ちゃんだと「逆境にめげず健気」な役柄が持ち役に多いですが、同時に「か弱く愚かしく純粋な故に転落する人物」や「気性の激しさと一途さ故に不運に見舞われる人物」が多い気がするので、「わたし」とはほんの少しキャラが違うかも?と考えながら聴いていました。ただ、彼女の破綻のない凛と澄んだ歌声は随一だと思います。

2幕は、『M!』と『エリザベート』の楽曲を中心に構成。1幕以上に、本番の舞台ではあり得ない歌がたくさん聴けました。
例えば禅レオポルトと土居ナンネール。役としてではなく純粋に一つの楽曲として歌われていましたが(特に土居さん)、あの曲がこんなしっとりした大人のデュエットになるなんて、と聴き入っていました。
土居さんは「星から降る金」も歌われましたが、温かく優しい歌声の男爵夫人、なかなかステキでした。舞台上の急な階段を降りる時、一瞬ではありましたが裾を気にして下を見る姿を見て、そう言えば土居さんの貴族のお姫様役って見たことがなかったな、と気づきました。
聖子ちゃんのコンスタンツェのソロも良かったです。実は自分、東宝版の本番の舞台でのあの曲の歌唱にあまり納得できたことがないので、日本人の歌唱できちんとあの曲を聴かせてくれたのは嬉しかったです。
山口さんの猊下のソロ曲を聴いて思ったのは、この方は役の衣装を着けていなくても役になって歌う方なんだなあ、ということです。まあ、区別できる程器用な方ではないだけかも知れませんが(失礼)、それでも、傲慢で孤独でセクシーな猊下そのものの雰囲気をまとって舞台に現れてくれると、もう胸の高鳴りが止まらなくなります。
育三郎シカネーダーと育三郎ルキーニ。彼は歌は本役のお二人より上手いんじゃないかとも思えるぐらいで、シカネーダーダンスもそつなくこなしていました。ただ、初日のせいもあると思いますが、段取りをこなすことに手一杯で遊びを入れることができていないように見えました……。特にシカネーダー。美しいダンスと豊かな表現力でドラマティックに魅せてくれる、吉野シカネーダーの凄さを思い知った次第です。
パトリックさんは「何故愛せないの?」でヴォルフのソロを披露。がっちり体型の方なので、一瞬ですがヴォルフじゃなくコロレド猊下が歌っているように見えたのは内緒です。

後半はエリザベート編。パトリックさんの『最後のダンス』はとにかく声量があって力強かったです。肉食系な印象のトートでした。
一路さんと山口さんの「私が踊る時」。それまで、一路さんの歌い方の昔から変わらない独特の癖とか、山口さんの調子とか、小さなことが心に引っかかっていた筈の自分。不思議なことに、この2人の息が合いすぎる位に合ったデュエットを聴いているうちに、そういう細かなささくれが綺麗に溶かされ、涙が出そうになりました。これはとても理屈で説明できるものではありません。
また、一路シシィを見やる山口トートの眼差しと表情に漂う何とも言えない大人の色気!親バカ、じゃなくファンバカと言われても良いです。あれにはもう悩殺されまくりでした。
あと、実は一路シシィの現役時代、禅フランツとの「夜のボート」への感動が薄かったのですが、今回は少し違っていました。多分、あの頃より禅フランツの気持ちが理解できるようになったのが大きいのだと思います。
そして、山口トート、育三郎ルドルフの「闇が広がる」。個人的には前回公演での禅ルドルフがもう一度聴きたかったとも思いますが、育三郎ルドもたっぷりの声量で熱唱していて悪くはなかったです。ただ、井上ルドと同じく、山口トートとそんなに解け合わない声質かも、とは感じましたけれど。また、山口さんの声質もめちゃくちゃ相手を選ぶのだと、改めて実感いたしました。

カーテンコールでは、天井からクンツェさん&リーヴァイさんの大きなパネル写真が降りてきていました。キャストの皆さん、初日ということで、数回お出ましがあった他、客電が点いて追い出しのアナウンスがかかってからも、更に1回コールに応えていました。

クリエでのコンサートは本日1回のみの鑑賞となりますが、来月、中日劇場公演に遠征の予定です。曲目は決まっていますが、劇場の規模も、キャストも異なる(育三郎くん→井上くん)コンサート。かなり、楽しみにしています。

番外:ガンバレ、武岡さん
前回のコンサートと同様、MCを務められたのは武岡淳一さんでした。流暢ですがどこか一所懸命さが付いて離れない司会ぶりで、前回の公演の時や『M!』の製作発表の時、かなり誰かさんの身体を張ったボケに振り回されていた記憶が鮮烈です。なので、彼が登場すると何となく「ガンバレ!」と心の中で呟いております。
そう言えば今回はトークが少なかったですね。それは曲目が多いためであって、決して誰かさんのボケ暴走を防ぐためではないと信じたいです。
その数少ないトークとして、1幕にて来日ゲストであるパトリックさんとのミニトークがありました。武岡さんの、私はドイツ語も英語も喋れませんので……という紹介に従って通訳担当として登場したのは聖子ちゃん。ところが、最初のうちは聖子ちゃん、普通に通訳らしきことをこなしていましたが、途中から自分が日本語と英語のどちらを喋っているか混乱したらしく、「ええと、cultureって何だっけ?」と発言(^_^;)。更にはパトリックさんとフリーダムに英語でトークを始め、武岡さんが置いてきぼり状態に(^_^;;)。うぅん、天然パワー恐るべし。
そして2幕では、武岡さんのマイクにトラブルが発生。一度下手へ引っ込みましたが、「マイクはこちらだそうです」と再度下手から上手へ歩かされ、やっとマイクを交換できていました。初日故のトラブルとは言え、本当にお疲れ様、と申し上げたいです。