日々記 観劇別館

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『レ・ミゼラブル』プレビュー初日感想(2011.4.8ソワレ(全体篇))

キャスト:
ジャン・バルジャン山口祐一郎 ジャベール=岡幸二郎 エポニーヌ=Jennifer ファンテーヌ=知念里奈 コゼット=中山エミリ マリウス=山崎育三郎 テナルディエ=駒田一 テナルディエの妻=森公美子 アンジョルラス=上原理生 リトルコゼット=清水詩音 リトルエポニーヌ=斎藤真尋 ガブローシュ=加藤清史郎

遅くなりましたが、『レ・ミゼラブル』プレビュー初日の感想の続きです。
今回は何だかもう、山口バルジャンにすっかり魂を持って行かれてしまったので、他をあまりきちんと観られていなかったりします。
それに、「無事劇場の客席で、公演中の上演中断(中止)もなく最後まで観られる喜び」が最も強く、その気持ちは今でも変わりありません。
というわけで個々のキャストや場面の感想をあまり語るのは、本当はおこがましいとすら思うのですが、少しだけ語らせてください。
以下、箇条書きでまいります。

  • 凛と熱い岡ジャベール

岡ジャベールは、いつものとおり凛としていて泥臭さや叩き上げ感は薄いのですが、今回、バルジャンに向ける眼差しに、貧民や学生達の前で見せるクールな眼差しの対極の鋭さ、熱さ、激しさが込められていて、ぞくりと来ました。地下水道でバルジャンを迎え撃つ、最期の対決の際の、必死に自分を保とうと揺らぎつつも強烈に睨み付ける(別名・ガンを飛ばす(笑))あの瞳が忘れられません。

  • 大人になった山崎マリウス

山崎マリウス、登場した瞬間「あれ?大人になった?」と感じました。前回は*1ひたすら素直で可愛らしいイメージでしたが、今回の山崎マリウスは、真面目でやや神経質で、硬質な雰囲気すら漂わせる、正に「堅物マリウス」。その分コゼットにひとたび恋した後ののめり込み方と、周り(特にエポニーヌ)の見え無さ加減が半端無かったです。見た目もヅラが変わり、少しおでこを出した短めの髪型になっていました。
私的には、仲間を全て喪った後の、大人の落ち着きでしっとりと、しかし独りぼっちの空気を冷え冷えと漂わせる「カフェ・ソング」にすっかり聴き入りました。
それから、バルジャンが過去を告白する場面での、山口バルジャンとのアイコンタクトがとても深くて驚かされました。告白された内容に強い衝撃を受けつつも「お願い、行かないでー!」と必死な眼差しで訴える山崎マリウス。あの訴える表情を目の前にして、それでも「頼むよ!」と立ち去れるバルジャンの決意も、相当強かったのだと今更気づいた次第です。

  • 安定の駒田テナ&森マダム

もう、何も言うことはないです。バルジャンとの取引場面での掛け合いも楽しいですが、宿屋の主の歌での呼吸も絶妙。プレビューのためかアドリブは抑え気味の印象を受けましたが、個人的にはあまり暴走しない方が好みです。

  • 違和感のない母娘

知念ファンテと中山コゼット。同系統の割と似た顔立ちをしているので、母娘ということがすんなり納得できる二人です。
知念ファンテは、正直、あれほどファンテという役に馴染むとは思いもよりませんでした*2。歌もエポの時より発声が聴きやすく、気丈さと儚さがバランス良く同居したファンテでした。
中山コゼットは、歌は高音がちょっと弱いものの、普通に歌えていたと思います。実年齢では知念ファンテより上の筈ですが、しっかり可憐なコゼットになっていました。

  • やさぐれエポニーヌ

ジェニファーエポ。世を拗ね、人生に疲れ、やさぐれている度合いでは、恐らくこれまでのエポの中でも随一だと思います。
歌ですが、ああいう歌い方をするエポを観たことがないので、あれがエポとして「あり」か「なし」かをどう評価したら良いか分からない、というのが正直な所です。
きっと、ロックミュージカルだったら、あのハスキーボイスと、ソウルフルな歌い方で文句なくOKだと思うのですが……。
もしや「すれっからしな言動の陰に秘めた可憐さと健気さ」という、今までのエポニーヌ像をぶち壊すために彼女が起用されたのでは?とも思いましたが、平田エポを観るまでは判断を保留します。

  • アンジョルラス!ABCの友!そして強盗団!

上原アンジョ。きりりとした顔立ちで、声量も申し分なく、それでいていっぱい伸びしろのありそうなアンジョという印象を受けました。これから、観る度に変化してくれそうな、そんな予感がしています。
ABCの仲間達の中で、おお、と思ったのはコンブフェール後藤晋良さん。スケベな工場長とは別人のような、二枚目メガネ男子がクールでした。
強盗団で何と言ってもイケメン度合いが目立ったのは、モンパルナス藤田玲さん。彼に気を取られていて、折角のブリジョン田村雄一さんを本編で見逃したのが悔やまれます。
今年のアンサンブルさんは、男女を問わず、少なくともプレビューで観たチームは、例外なく実力派が揃っていると思いました。

  • 子役達頑張る

リトコゼの詩音ちゃん。レミゼに出る子役達で「下手な子」を観たことがないのですが、彼女も例外なく上手で、声量もありました。
そして「こども店長」清史郎くんのガブ。何故か今回だけ子役スケジュールが発表される等のスペシャルな扱いに引っかかりがないではありませんでしたが、実際に舞台に立つ彼は、心から演じることを楽しみ、きちんと舞台上で役割を果たせる、他の子役達と何ら変わらない小さな役者の1人でした。台詞回しは意外に良かったと思います。歌も、飛び抜けてるわけではありませんが、普通に聴ける歌声でした。
ただ、ガブの出番は微増していたと思います。私がはっきり気づいたのは、「乞食たち」の娼婦2人の言い争いで、さっと2人の前に走り込み、一瞬だけおどけて見せてまた駆け去っていく場面だけでしたが、他にもガブの小芝居が増えていたような気がします。気のせいかも知れませんけれど。

次回は4月16日ソワレを観る予定です。ジャベールだけは4月中に観る山口バルジャンとの組み合わせで全キャストコンプします。

*1:と言っても私は2007年に観たのがラストです。

*2:彼女の私生活とファンテの境遇に若干重なる点はありますが、それと役に馴染めるかは全く別の話です。