日々記 観劇別館

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『エリザベート』城田トート感想(2010.8.24ソワレ)

キャスト:
エリザベート朝海ひかる トート=城田優 ルイジ・ルキーニ=高嶋政宏 フランツ・ヨーゼフ=石川禅 ゾフィー寿ひずる ルドルフ=田代万里生 少年ルドルフ=坂口湧久

今期から『エリザベート』に登板しているプリントートこと城田トート。本当は9月まで観るのを待つ予定でしたが、世間の評判が意外に良さそうだったので、ちょうど何日か東京に通う機会があったのを良いことに、急遽チケットを入手し観てまいりました。そして、実は山口トート以外でエリザを観るのは初めてでもありましたので、観る前は妙に緊張。
本日、やっぱり寿ゾフィー格好良い、とか禅さんの安定感は素晴らしい、とか大司教中山さんの娼館での小芝居が面白過ぎる、とか色々言いたいことはありますが、城田トートに偏った感想になることをお許しください。

「背がでかい」「彫りが深い顔立ち」「金髪系トート」ということで山口トートと比較対象になりがちな城田トートでしたが……。開演してみると、あら、ちゃんとトートらしく歌えるじゃない、と瞠目いたしました。見た目も中性的な美貌、身体も絞り込んだ上でこの大役に臨んでいる感じで、爽やかに乾いた歌声とともにビジュアル系バンドのヴォーカルを彷彿とさせます。
ただ、城田トート、自分しか見えてないどこかナルシーな雰囲気に満ちた死神でした。まあ、本日組んでいた朝海シシィも自分しか見てない系だし、あれはあれで1つのトート像としてありかな、と思います。
ある友人が城田トートについて「シシィの苦悩をやる気のないタルそうな目で見てる」と語っていましたが、最後通告の場面でまさにその通りの演技をしていて笑ってしまいました(^_^;)。
2幕の「悪夢」の指揮もかったるそうにうんざりした表情ですし、エピローグでシシィを迎える時も果たして嬉しいのかどうか、あまり心の読めない表情をしていました。
それから、場面が前後しますが、体操室のシーン。ドクターの爺様声とよぼよぼ歩きはちょっとやり過ぎ?とも思ったものの、マントを取ったらまた体温低そうなトートが現れたので吹き出してしまいました。
ついでに、そうか、普通のトートは山口トートの様にマントを豪快に放って脱ぎ捨てたり(そして稀に勢い余って上半身全脱ぎ(^_^;))、長椅子の上で開脚状態で身悶えしたり、獣のごとく勢いこんでシシィに迫ったり、追い返されてもしょんぼりしたりしないんだ、と変な所で感心したりもしましたが。あまりクールビューティだとシシィへの思い入れが分かりにくいのがちと難点かも知れません。
そして城田トート最大の謎。本人はかなり歌えるのに、朝海シシィの音程が微ズレした歌声と違和感なくハモっていました。山口トートの様に歌い方が声量朗々系ではなくビジュアルロック系だからだろうか?とも推測しましたが、理由は良く分かりません。
全体にビジュアル系、低体温超然系の城田トートで「若さ」に起因する「目新しさ」を覚えたのは、まず「闇が広がる(リプライズ)」でハシゴをえっちらおっちらではなく、パイプを消防士スタイルですいーっと滑り降りてきた瞬間。革命ダンスで激しく苦しそうでなく軽く踊ってた所。それからエピローグでシシィをお姫様抱っこして棺に納めていた所でした。……どれも山口トートはまずやらないだろうと思われます(笑)。
それにしても、城田トートをじっくり観れば観る程、自分の山口トートへの愛が深まっていく不思議さ。もちろん城田トートも大層スカして格好良く面白いトートだと思います。しかし、城田トートを観ることにより、時に「動かない」だの「棒立ち」だの「年寄り」だのと揶揄されることもある山口トートが、実の所かなり熱くて深い執着を持ち全身全霊でシシィを追いかけていたのだと分かり、惚れ直した!という感じです。
石丸トートはどんな個性を打ち出しているのでしょうね。俄然観るのが楽しみになってきました。