日々記 観劇別館

観劇(主にミュージカル)の感想ブログです。はてなダイアリーから移行しました。

『クリエミュージカルコンサート』感想(2010.6.19ソワレ)

激戦の中、ただ一公演分のみ手に出来たチケットを手に、この日のために上京した友人と一緒に行ってまいりました、コンサート。
本日は一路さんが出演されない唯一の日ということで競争率が低めだったのかも知れません。ですが、大変楽しく聴きごたえのあるコンサートで、休憩込み2時間20分という時間があっという間に過ぎ去って行きました。

コンサートは第1部がM.A.のナンバー、第2部がエリザベートとM!にレベッカのナンバーという構成でした。

初めに、山口さん出演部分の感想からまとめてまいります。
今回、第1部のM.A.のナンバーは、ラストの海外勢による2曲を除いてすべて扮装で歌われていました。山路さんと山口さんによる懐かしの(笑)M.A.プロローグによりコンサートが開始されたわけですが、カリオストロの扮装で顔を上げた山口さんの顔には何とおヒゲがない!
おヒゲメイクを落とすのが大変だから、という主催者側の配慮なのか、ご本人が面倒くさがったのかは定かではありませんが、顔だけ若々しいカリオストロにはどこか違和感が……。
「幻の黄金を求めて」と「ILLUSION」の2曲を歌われてましたが、若干高音部を出し辛そうな箇所こそあったものの、ああ、あの演目でのカリオストロの存在感は薄かったけど、曲は本当に格好良くて、流石山口さんへの当て書きだよね、と改めて実感しました。
この2曲で山口さんの両手が盛大に動いてる、と思ったら、今回のカリオストロはステッキを持っていないのですね。納得です。

第2部からは普通の黒いスーツで登場。
実は自分、素でミュージカルナンバーを歌う山口さんを観るのは初めてなのです。このため、それらのナンバーに対し山口さんがどのようなスタンスで臨むのか?ある程度役になり切って歌うのか?それとも完全に音楽として歌うんだろうか?という点が大層気になっていました。
今回聴いた感じでは、前者のスタンスという印象です。通しで役を演じている時と全く同じではないにせよ、できるだけ役を身体の中から呼び出してきて、演じている時のテンションに近づける形で歌っているようにお見受けします。
そのスタンスが涼風さんとの「私が踊る時」のデュエットではやや裏目に出てしまった感があります。というのも涼風さんはシシィとしてではなく専ら涼風真世として歌っているように聞こえたので。後から考えてみれば涼風さんがこの曲を歌うのは一路さんのいない19日のみだったわけで、単にこなれていなかっただけかも知れませんが。でも山口さん、涼風さんの呼吸を読んで合わせるように丁寧に歌っていらっしゃいました。
M!の「神よなぜ許される」は、2007年公演の時と同じく、やはり昔よりキーを下げて歌っているように聞こえました。「愚かな男が作り出す!」のフレーズでの憤りに歪んだお顔は猊下そのもの。
禅さんとの「闇が広がる」は、お2人のハモり具合のぴったりさに驚嘆しました。特に禅さん。若々しく朗々と伸びる美声はルドルフとして違和感全くなし。もう禅さん、いつでもルドルフやれるよ!と思います。この日最大の思わぬ収穫でした。
「最後のダンス」は、扮装もせず、上半身もトートになっている時ほど激しくアクションしてはいないのに、熱っぽく訴えかける表情と歌い方はトートそのものでした。時々目を瞑りながら歌い上げる表情の、まあ官能的なこと。そして劇場中に響き渡り客席を包み込むボイス。しばしオペラグラスに釘付け状態で圧倒されてしまいました。
……そして、その圧倒された会場の空気を、トークコーナーで一気に瓦解させる男、山口祐一郎。司会のアルコ伯爵こと武岡淳一さんから話を振られるや否や、1人ボケツッコミまくりハイテンショントークを舞台を縦横無尽に歩き回りながら展開し、ありがとうございましたー!と逃げて行きました(^_^;)。本当にフリートークが苦手なんですねえ。
山口さん関係の感想は以上です。あとM!から合唱2曲に参加してましたが、感想は省略します。

全部の感想を書いているともっと長くなってしまうので、以下、強く印象に残った点のみ。
まず、今回の来日メンバー、M.A.ブレーメン版オリジナルキャストであるサブリナさんとパトリックさん。何と言っても、このお2人の歌唱力の安定感が実に半端なかったです。日本人キャストに関しても、贔屓目抜きで山口さんと禅さんについては同様に感じました。
この4人の共通点は、全身から全方向に声が響いているということ。そして、そういう声は聴いていてとても心地良さを覚えさせてくれるのです。
特にパトリックさん。見た目は阿部裕さんとか藤岡正明さんのようないかつい系なのに、ちゃんとお声は貴公子フェルセン、そして悩める青年ヴォルフになり切っていたのが素晴らしかったです。
役替わりキャストでは禅さんの凄さは先程も書きましたが、第1部でフェルセン(こちらは正規キャスト)、第2部の「ミルク」ではルキーニのパートを務めた今さんも、ルキーニにしてはやや真面目系ではありますが、なかなか良かったです。最後のエルマーの決め台詞もぜひ叫んでいただきたかった、と思いました。
女性キャストでは、まず土居さん。あのご自身の声の美質を最大に引き立てる発声の仕方をされている所が良いのです。
それから玲奈ちゃん。久々にマルグリットの歌を聴きましたが、何だか当時より感情表現が豊かになった気がします。
ただ、今回はブレーメンでマルグリットを演じたサブリナさんの「心の声」が圧倒的迫力に満ちていて、そっちに全部持っていかれた感があるのは否めません。別にサブリナさんだけの功ではありませんが、今回コンサートバージョンでM.A.を聴いてみて、やはり音楽は良かったんだな、と深く得心しました。
他にも涼風さんとマリーは結構キャラが合っていたことに今更気づいたりとか、今フェルセンはやはり大人の色気が素敵、とか、オルレアン公にもいて欲しかったとか(できれば綜馬オルレアンで)、ダンヴァース対決はシルビアさんWinだとか、色々思う所はありますが、このくらいにしておきたいと思います。1回しか聴けないのが惜しい、本当聴きごたえのあるコンサートでした。