日々記 観劇別館

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『天璋院篤姫』感想(2010.2.20夜の部)

キャスト:天璋院篤姫内山理名 皇女和宮遠野あすか 滝山=高橋かおり しの(重野)=小林綾子 勝海舟国広富之 徳川家定今拓哉 本寿院・お幸の方=秋野暢子 庭田嗣子=山田スミ子 幾島=香寿たつき 島津斉彬西岡徳馬

というわけで、『Garantido』とマチソワで、明治座で『天璋院篤姫』を観劇してきました。
まずは感想をお読みいただく前に注意書きです。
天璋院篤姫』の原作は上巻を流し読みしただけ、歴史にも全く詳しくないので、そっち方面のツッコミは0です。また、ミュージカル畑の役者さん(香寿さん、今さん、遠野あすかちゃん)が今回大量投入された意味も正直良く分かっておりません。若年齢層およびアラフォー層狙い?と漠然と想像している程度です。しかも上様登場シーンに視線が偏ってます。以上、ご容赦の上ご笑覧ください。

『Garantido』のカテコを待たずに芸術劇場を出たのが15:45頃。ダッシュ有楽町線に駆け込み、市ヶ谷駅で都営新宿線に乗り換え、浜町駅から小走り2分ほどの明治座の客席に入った頃には16:20を軽く回っていたと思います。
以下は言い訳。チケットを取った時に時間の近接が気にはなっていましたが『TSの公演はいつも上演時間短いし』となめてかかっておりました。フタを開けると『Garantido』の上演時間は2時間45分。しかも2幕終了の時間でありカテコ終了の時間にあらず。当日の『Garantido』は13:00開演。篤姫は16:00開演。……謝先生を初めとするTSカンパニーの皆様、篤姫カンパニーの皆様、なめてて本当ごめんなさい。

というわけで明治座客席に座った時は、とっくに篤姫は輿入れしており、幾島と滝山が火花を散らし、篤姫が本寿院様と和気藹々と会話している場面でした。着席時に幾島がこっちを見ていたような気もしますが気づかなかったことにしたいです。
そして今さん扮する上様が登場!声も良く通り、和服の似合う上様でした。今さんの地声に近いやや高めの穏やかな声で語り、ウツケというよりどちらかと言えば無気力、気弱の傾向の強い上様だと感じました。後ほど触れたいと思いますが、篤姫が結構猛々しいアネゴな役作りをしていたので、余計に上様の手弱女ぶりが際だちます。また、上演時間の都合だとは思いますが、寝所で割とすぐに篤姫に気を許して膝枕などしておりました。
しかし上様の登場場面の半分以上が寝所というのはどうなのかと。とは言え、衣装の夜着が白い上ぴったりしているので、今さんの無駄のなさ過ぎる体型が物を言っておりました。身体って鍛えておくべきだなあ、と改めて感じ入ったものです。布団に腰元達の差し金で枕絵を放り込まれて癇癪を起こす場面でちょっと大河の堺雅人上様を思い出しました。

劇場入りした時間が遅かったので(^_^;)、間もなく1幕が終了し、休憩入り。
因みに『天璋院篤姫』のタイムスケジュールは、1幕:1時間、休憩:30分、2幕:1時間、休憩:30分、3幕:55分(計3時間55分)という大変ゆったりしたものでした。
その代わり休憩が30分なので、トイレに行ってもまだたっぷり休めます。まず、劇場外に出て、来る時は急いでいてじっくり見られなかった役者名のノボリをじっくり見学。香寿さんやら今さんの名前がこういう和物のノボリに書かれているのは不思議なものがあります。
客席のある3Fに戻りロビーに回ると、お土産物から幕間にいただくお茶菓子まで取り揃えた売店がずらりと軒を連ねていました。上演演目に合わせて鹿児島フェアをやっていたので、思わず自宅への土産用にかるかん饅頭を購入。客席で豆大福をかじり暖かい日本茶を啜ると不思議な至福感が湧きました。洋物演目とはまた異なる夢の世界が今ここに。

そんなこんなで2幕開始。初っ端からいきなり花道から、白い夜着の上様が登場。4列目辺りで病の発作が起きる仕草を見せて一瞬停止。そしてまた舞台へと歩み出します。この、再度一歩前に踏み出す時に裾からちらりと細いふくらはぎが見えて、これはどの層に向けたお色気アピール!?と無意味にどきどきしてしまいました。今回2度目観劇で1度目を花道かぶりつきで観たという同行の友人によれば「足のサイズは結構大きくて28cmぐらいあった」そうです。流石にセンターブロックからそこまでは識別できません。
そして2幕の序盤で上様は篤姫に後事を託して倒れ、次の場では既にご逝去。ここで今回の観劇目的は半分以上果たされたようなものですが、取りあえず続けて鑑賞。上様と本当の夫婦になれなかったとか、自分は斉彬父上の権力欲の犠牲になったのでは?とかこっそりと、でも意外にたくさん不満や自己分析な言葉を吐きまくりつつ、どんどん雄々しくなっていく篤姫を観察していました。
紀州慶福公が毒を盛られつつも城の者を責めずに耐え、その健気さに篤姫が打たれる場面があったのですが、篤姫がショタにしか見えなかった自分の目は多分腐っているのでしょう、ええ(少年慶福を演じていたのは女性でしたが)。それは冗談として、そのせいで無礼な一橋公を一押ししなければならない本来の自分の使命に悩み、江戸城を訪れた父上(実は既に魂)に対して権力欲云々の文句をたれてしまうのですが、その言葉を受けた父上(の魂)が、そんな小さい目的ではなくもっと大きいこの国の将来のためだ、と諭す場面で、斉彬様格好いい!と思ってしまいました。でも3幕辺りで西郷さんが「久光公の命を帯び……」と口にした時、あの大河での弟さんのお姿が脳裏をよぎったのは内緒です。
月日は流れ、ついに和宮が登場。あすかちゃんの和宮は、いかにも尻の青い世間を知らず、でも思ったことをはっきり過ぎるくらいに口にする、可愛らしいけれどワガママで高飛車なお姫様でした。大河で堀北真希ちゃんが演じた、口数少なく意志を固く内に閉じ込めたお姫様とは全く違うタイプで新鮮。そしてあっという間に夫・家茂が大阪で亡くなり、2幕終了。

2幕後の休憩時に、ふとメインロビーではなく客席袖側の通路に回った所、『モリー先生との火曜日』のチラシを発見。観に行く予定はないけどどれどれ、と近づいたところ、何と隣にはろっくりばーのチラシが!「天璋院篤姫出演中!!」と記され今さんの顔写真が掲載された、FC募集のモノクロチラシでした。山口さんや保坂さんのチラシは見たことがありましたが、今さんにもあったとは、と思わず持ち帰ってしまいました。しかしチケット先行取扱について「良いお席のご用意ではなく」とチラシにありましたが、今さんに関しては現在の所あまり見づらい席が来たことはないです。

3幕開始後最初の見せ場は、家茂毒殺への関与を疑われる和宮篤姫との2人きりの対話場面でした。あすか和宮、この対話で篤姫に心を開き江戸城に残ることを決意し、次の場面からは顔つきから青臭さが消え急激に凛々しくなったのは流石です。
大政奉還、朝敵として追われる将軍、と話はあっという間に進み、勝海舟の尽力で無血開城が認められたのと引き換えに城を明け渡さねばならないことに葛藤する篤姫。彼女の前に現れ優しく語りかけるのは、薩摩の母上、斉彬父上、そして上様。上様の羽織袴姿は初登場時とこれしかないので、またじっくりと観察してしまいました。黄色い羽織が良く似合ってました。そう言えば『天翔ける風』の溜水が着ていた「腹話術人形」な黄色いジャケットもやけに似合ってましたが、今さんって実は黄色が合っているのでしょうか。
ああ、明治座だ、と思ったのは、城を出ることを決意した篤姫が花道を歩み出す瞬間に島津亜矢さんの挿入歌が流れ始めた時です。青いスポットに照らされながら、曲に合わせてゆっくりと花道を下っていく姿が綺麗に映えていました。直後にラストシーン。最後まで篤姫に仕えた重野が、主人の死後に篤姫和宮の幻の花見を思い浮かべるというちょっと切ない幕切れでした。

以下、全体を通しての感想です。
まず、内山篤姫ですが、発声にドスが利いていて怖かったです(^_^;)。もちろん篤姫は型にはまらない賢い姫君なので必ずしも上品でなくて良いとは思うのですが、時々凛とした御台様というよりはアネゴっぽい台詞回しをしていたのは気になりました。
とは言え、場面転換時に幕前で演じられる江戸城廊下や江戸市中でのドラマを除けば、篤姫は全編にわたりほぼ出ずっぱりなので、きっと内山さんの神経はすり減りっぱなしなことでしょう。今回、1場面ごとの場面転換が、ミュージカルの迅速なそれに比べると随分ゆっくりしていて、もっと早くできないんだろうか?等と思っていましたが、考えてみたらゆっくりな方が主役はお召し替えも慌てなくて良いですし、一息付けるのでわざとゆっくりなのかも知れないとふと気がつきました。
もう少し多い出番で見たいと思ったのは香寿さんの幾島。とりわけ3幕では本当に一瞬しか登場しないので、かなりもったいない気がしました。
逆に秋野さんのお幸の方と本寿院は少し役に合っていないかも?と感じられました。ああいういかにも穏やかで良い人の役より、大奥の腰元達のように檄を飛ばす役の方が似合うように思うのですが。
それから、自分が日頃観ているミュージカルと今回のような商業演劇との違いで最も大きいと思ったのは、男優と女優の格付けの差です。流石に西岡さんや今さんクラスになると劇中での扱いも大きめですが、女優を中心に大きく据えよう据えようとする演出の力が随所に働いていると感じました。ミュージカルもそういうのが全くないわけではありませんが、明治座の方が強く打ち出されているように思います。

色々書きましたが、総じて明治座という劇場の空間は楽しいものでした。もし再度行くことがあれば、今度は客席お弁当にでも挑戦してみようか?と考えているところです。