日々記 観劇別館

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『ハムレット』のパンフレット

1993年劇団四季公演『ハムレット』(主演:山口祐一郎(^_^))のパンフを某オク経由で入手いたしました。
四季のパンフの常で固い文章が多い上、別に写真集が出た(と、聞いています)こともあってか、モノクロ写真しか載っていないパンフでしたが、17年前の36、7歳でいらした山口さんの美しさは十二分に伝わってきました。良く新聞や雑誌の記事で山口さんが身振り手振りで熱弁を振るっている姿の写真を目撃しますが、このパンフの写真も例外ではありません。
四季のハムレット役は初演(1968年)が平幹二朗さん、1982年公演が日下武史さん、その後が山口さんでいらしたようです。パンフに「新旧ハムレット対談」として、この公演ではクローディアス役でいらした日下さんと山口さんの対談が4p程載っています。
この対談、日下ハムレットでの上演の際にデビュー2年目でフォーティンブラス(別のページに小さいながら当時のモノクロ写真あり)を演じた山口さんが、お稽古ノートをとてもびっしり付けていたというエピソードなども載っていて、おお、真面目路線?と思いきや。山口さん、稽古が少しずつ進んで芝居の細部が構築されていく過程を「五目ご飯を作るときに似てる」と例えて、「材料がおいしい五目ご飯になる」過程を書き記しているのだ、と語っていました。もしかして料理を実体験じゃなくて想像で例えてるんじゃないか?という気がとてもいたしましたが、そこは突っ込まないことにします。

ちょっと心が痛んだのは、同じインタビューで山口さんが、ハムレットという人物に共感できる部分はあるか?という問いに答えて、
「僕の場合、家庭環境がハムレットと少し似ているので、とてもフィットするところがあるんです」
と発言されていることです。子供の頃、「勝手に父親が変わっちゃって」やってきた相手をいつどんな表情や呼び名で父と呼んだら良いか?と悩んだりしていた、と述懐されていました。
実際の所、似た経験があるからと言って即その役になり切れるわけではないのかも知れませんが、役者というお仕事は時に自分の傷も含めた内面を表に引きずり出して向き合わなければならない、実に因果な商売であり、それは山口さんとて例外ではないのだ、と読んでいて改めて考えさせられました。

ちなみにこの『ハムレット』には芥川英司(現・鈴木綜馬)さんがレイアーティーズ役、今拓哉さんが前回公演時に山口さんが演じたフォーティンブラス役で出演されていたそうで、巻末のキャスト写真一覧にお二人の笑えるほどお若いポートレイトが載っていました。レミゼ2003年公演でテナルディエを演じられた雉鳥功策(現・三遊亭亜郎)さんもギルデンスターン役でご出演。そうそう、WSSで一度拝見したことのある立岡晃さんって京都WSSの出演中に亡くなられたんだよね、『ウィキッド』等で観たことのある役者さんも何人かいるなあ、などとキャスト写真を3回ぐらい見直して、『エリザベート』に出演されていた縄田晋さんのお顔があるのにやっと気づきました。この年(1993年)が初舞台でいらしたとか。この12、3年後に死神とその取り巻き、あるいは傀儡として共演するなんて思いも寄らなかったことでしょうね。

全部モノクロですがお稽古写真も載っており(ページをめくると初っ端に出てくるのが演出家氏のお顔なので何故?と思いましたが(^_^;;))、四季系の評論家の方の山口さん評*1など読むところもたくさんあってなかなか楽しいパンフでした。本音を言えば当時実際の舞台を観たかったですが、それは想像の翼をはためかせてしのぐことにします。

*1:山口さんがインタビューで口にされていた生い立ちの話にも軽く触れ、「劇団のエース」としての孤独感などについて言及しています。