日々記 観劇別館

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『ダンス・オブ・ヴァンパイア』感想(2009.7.5ソワレ(初日))

クロロック伯爵=山口祐一郎 サラ=知念里奈 アルフレート=泉見洋平 アブロンシウス教授=石川禅 ヘルベルト=吉野圭吾 シャガール安崎求 レベッカ阿知波悟美 マグダ=シルビア・グラブ クコール=駒田一

風邪気味の所を頑張って帝国劇城、TdVの初日に出向いてきました。
以下、多少のネタバレありなので、未見の方は斜め読みしておいてください。ついでに勢い余って長文です。ごめんなさい。

3年ぶりのTdVは心持ち舞台装置が少しずつ豪華になっていました。特にクロロック城。「門だけ豪華であとはスカスカ状態」や「飾り気のない階段」ではなくなっており、ああ、お金をかけてくれるようになったのね、よかった、と変なところで安心していました。ただ、宿屋はやっぱりドリフのコント状態で、スペースもあまり変わらなかったような。でも、壁の作りなどが心なしか細かくなっていたと思います。

真っ先に初演と違う、と感じたのは、「ニンニク」の宿屋の場面での安崎シャガールの歌声。シャガールの癖にこんなに艶やかで色気があって良いのか?と思わず聴き入ってしまいました。初演の佐藤さんより色男なイメージが強いので、「娘はもう18」が白々しく聞こえて仕方なかったです。「歌」として聴けるだけに尚更。
あと、泉見アルフのマグダの胸元を見た時の台詞が「小さくない。でかい。丸い。」という具合に語尾に「!」を付けず妙に抑えていたのが笑えました。泉見アルフ、後の場面で「スポンジ最高!」と叫んだ後のリアクション(書くのは恥ずかしいので詳細は避けます)も、何だか煩悩が3年前より何割か深まっていたように見え、思春期の煩悩をこの年齢で演じられる泉見くんって凄い、と思いながら最初から最後まで見ていました。
初演時、泉見アルフの2幕終盤で変貌した時の演技が好きだったのですが、そこは変わっておらず嬉しかったです。

知念サラは、実はあまり期待していなかったのですが、意外にも結構好演しており、エポニーヌやキムよりも役柄に合っていたように思いました。誤解を恐れずに書きますと、サラの持つ女のずるさっぷりが自然にはまっていたと申しましょうか。歌にも全然危なげな所はなかったです。
初登板のシルビアマグダと禅教授は、まだ初日なので様子見な雰囲気に見えました。シルビアマグダは初演の宮本マグダと比べるとコケティッシュさが少ない代わり、斜に構えてシャガールを尻に敷いている蓮っ葉さを前面に打ち出している印象。きっと公演期間中にどんどん演技にオカズを増やしていくんだろうな、という予感がします。

それから禅教授ですが、市村教授が学問バカの中にも「老獪」を強く打ち出していたのに対し、自分のヘタレを隠そうとする故の「虚勢」の色が濃いように見受けられました。
細かい演出も変えられており、例えばアルフレートとともに伯爵&ヘルベルトの墓場に突撃する場面で、市村教授は墓場に降りようとして「服が引っかかった」から降りられなかったのですが、禅教授は高さに身体がすくんだので手すりにしがみついたまま降りられない、という風に変更されていました。その変更により、後からアルフレートを責め立てる教授の自分を棚上げした滑稽さはいや増したように思います。

吉野ヘルベルトは、初日から弾けまくっていました。1幕の登場シーンはまあ普通でしたが、真骨頂は2幕。事前に演出の山田さんから予告があったとおり、やや広くなったお風呂場で、スポンジを手に取りながらバスタブに横たわる彼の上着は・・・3年前より遙かにシースルー度が増したレースのものに変わっていました。そして下着は当然黒のTバック。しかもその格好で、
「小さいの、中くらい、大きいの!パーラダーイス!」
三段跳びで開脚ジャンプした上、側転まで披露するという、目のやり場に困るゴージャスぶり。ちなみに教授に十字架をかざして撃退される時には、
「目をつぶっていれば大丈夫!……(耐えきれず)人間は嘘つきだあー!!」
とさんざん絶叫してから去っていきました。初日でこれだと、今後どこまで行けるのか楽しみなような不安なような。

クコールは、時々お遊びを入れつつも堅実な演技を見せて笑わせてくれていました。
……で、私としたことが、1幕の終盤で頭痛がひどくなったため、休憩時間に入るやいなや外に駆けだして薬を飲み、ついでにトイレにも寄り……としていたところ、何とクコール劇場を見損ねてしまったのです。後から劇場でお会いした友人のお母様に伺った所、「今日は芸らしきものは見せていなかった」「3年ぶりの再演ということでご挨拶をされていた」というお話でした。というわけで、詳しくは他の方のレポートをよろしくですm(_ _)m。
クコールと言えば、今回、2幕のアルフレート達の逃亡シーンで、伯爵が、
「クコール、そいつ(十字架)をどけろぉー!奴らをここへ、取り戻せぇぇー!」
と命じているのを耳にしたそぶりを見せながら、それを明らかにスルーして客席に走り去っていることに気づきました。初演で同じ演技をしていたかどうかちょっと記憶にないのですが、あれ?もしかして、同じ人間として一行をかばった?それとも「取り戻せ」の命令の方を優先したの?と、見ていて少し混乱してしまいました。
そんなわけで、クコールに関しては、次回色々とリベンジしたいと思います。
ちなみにクコールがどけなかった十字架には、初演ではヘルベルトがヴァンパイアの1人を突き飛ばしていましたが、今回はヘルベルト自ら十字架を地面から抜きにかかろうとしてかなわず、他のヴァンパイアの腕をつかんだ所で場面が転換していました。

また、伯爵の化身・森山開次さんは、やはり指の先までしなやかで綺麗なダンスを見せてくれました。しかも本当、動きに切れがあって素敵。2幕の「悪夢」でのサラの化身と組んだダンスはかなり色っぽかったです。
「抑えがたき欲望」で伯爵のお歌と化身ダンスを両方鑑賞すべく頑張ってみましたが、実はかなりハードな動きをされていたのだなあ、と感服いたしました。昨年のファンイベントの時、山口さんが
TdVの時は新上さんの息遣いや掛け声が凄くてうるさかった」
と冗談交じりに話していましたが、そりゃあれだけ苦悩を全身で表現すれば息も荒くなるわ、と改めて思いました。

そして伯爵。カツラが初演とマイナーチェンジしてお顔の周りがすっきり。メイクも汚しメイクではないむしろ素顔に近い仕上げにしていたので、初演時よりも若返ったように見えました。
1幕のクロロック城で1カ所だけ軽く噛んでいた以外は、さすが初日で、絶好調に歌いあげていました。
所々歌声が若返っていたように聞こえたのは気のせいでしょうか?特に1幕のお風呂場でサラに歌い上げるシーン。例えていうなら昔の『CATS』のCDに残されている、地声を喉に響かせているようなそんな歌声。ちょっと異質な、今まであまり聞いたことがない歌い方だったので、幕間に「不調?」と戸惑うような声もちらちら聞こえてきました。私はあまり耳が良くないので、次回を聴いてみないと何とも言えないところはありますが、少なくとも不調ではないと思います。
クライマックスの吸血場面は、ちょっと短め(何秒か程度ですが)だったようにも見えました。初演ではもう少し長かったような気がしたのだけど。また、今回伯爵が吸血した後、サラの首筋に血が流れていましたが、初演でも血が流れていたかどうか、ちょっと記憶が曖昧です。

帰りの電車の中で途中までレポを書いて、一旦帰宅して眠りましたが夜中に目覚めてしまい、勢いで続きを書いているので、そろそろ疲れてきましたが、フィナーレとカーテンコールについてだけ少し触れておきます。
フィナーレに出てきたサラの衣装は、やはり通し稽古の写真に出ていたへそ出しスタイルでした。しかしヘルベルトの衣装まで胸をはだけていたのは予想外。吉野さん、そんなに色っぽくて良いんですか?という感じでした。
公式ブログで紹介されていた、客席も一緒に踊れるフィナーレの振付は、フィナーレナンバーを一通り歌い終えた後、ヘルベルトの「さー、みんな行くわよー!」という掛け声で皆で踊りました。伯爵の踊りは……やはり盆踊りでした(^_^;)。何故?

そして初日の特別カーテンコールの進行役は駒田さん。ご挨拶は知念さん、泉見くん(皆より先にシャワーを浴びたような、と言われてました(^_^))、禅さん、山口さんの順でありました。
山口さんのカーテンコールの挨拶は、大変に普通でした。「皆さん座ってください」と着席を促して、とても真面目に感謝の言葉を述べられていました。
その後、何度か(回数は数えてませんが、4、5回はあった筈)全員でお出まし。山口さんが知念さん、泉見くん、禅さん、安崎さんを、それから阿知波さんには拒否られましたが(笑)、続けてシルビアさん、森山さんを1人1人前に押し出していたのが印象的でした。
追い出しの曲が演奏されても客席の拍手はやまず。最後の最後に山口さんが1人で出てきてくれて、「がんばるぞー」「やったぞー」等何度か雄叫びを上げていましたが、牙付けたままだったので全部聴き取れず残念。でも、最後の「ありがとうございましたあぁ!」という叫びだけは聴き取れました。

というわけで、今回も順調にヴァンパイアウィルスに感染してしまったようです(^_^)。え、風邪ですか?出がけに飲んだ抗生剤が少し効いたようで、だいぶ落ち着いてきました。来週また観に行くまでには治したいと思います。

なお、パンフ(おまけとしてうちわ付きです)の伯爵のコメントを見たら、
「バスタブに○○でいるサラを発見すると額にキラキラと汗が……。」
等々と書いてありました。そこまでお風呂シーンにこだわるならもう何も言うことはあるまい、と、笑うしかありません。