日々記 観劇別館

観劇(主にミュージカル)の感想ブログです。はてなダイアリーから移行しました。

『あの戦争は何だったのか 日米開戦と東條英機』感想

クリスマス・イブの夜の放映でしたが、ようやく全編観ることができました。と言っても、前半のドキュメンタリーパートは1.5倍早送りで流し見でしたが(^_^)。

ドラマとしては、まあ、ドキュメンタリードラマというのが大きい要因にはなっていますが、各方面の地味な押し合いへし合いの駆け引きだの、押し合ってるうちに誰も後に引けなくなっただのが延々と続くので、観るにはかなり根気を必要としました。
ちなみに山口さん演じる近衛さんは、本当に最初の15分ぐらいしか出てきませんでした。荻外荘(近衛さんのご自宅)で羽織袴姿で現れて東條さんと真っ向から意見対立する、というか全く言葉が噛み合わない場面と、あと、新宿御苑でゴルフしながら*1風間杜夫さん演じる木戸内大臣に総理大臣の辞意を告げるという場面の2つのみでの登場でした。
羽織袴姿は、割と恰幅が良かったです。十中八九詰め物はしてたのでしょうけれど、11月のエリザ初日の頃微妙にお顔が丸くなっていたのは、もしかしてこの撮影に合わせてウェイトを落とさずにいた?という疑いを抱いています。
ゴルフのシーンで、1個1個グラスを覗き込んでチェックしてからお酒を注ぐ演技で、近衛さんの潔癖で細かい人柄を体現するという演出は面白かったです。また、内大臣に辞意を告げる場面では、華族の人独特の緩やかさと同時に、肝心の所で詰め腹を切らずに一歩引いてしまう冷たい雰囲気が出ていて良かったと感じました。

個人的には「荻外荘」ってまだ現存してたんだ!というのが驚きです。昔、近衛さんのお孫さんたる元首相の細川の殿の出自にライトな興味があり近衛さんについて調べたことがあり、その時にこのお屋敷の存在を知りました。ドラマではちょこっとしか出てこなかったけど、近衛さんの人生においてはかなり重要な場所だったと思います。ドキュメンタリーパートで紹介されていたように、敗戦後自害したのもこのお屋敷ですし。

ドラマの途中で身につまされてすごーく嫌な気持ちになったのは、海軍が、各局面を何かとリードしてきた陸軍への意地から多額の予算をゲットしてしまって、それで余計に開戦への道が後戻りできない物になってしまったというエピソード。何だよ、結局は閣僚(含む軍人)と官僚と職業軍人の意地かよ、昔から変わらないのかよ、と、普段公的な仕事をしている人間としては非常に腹立たしい展開でした。
東條さんは「陛下から賜った」任務を忠実にこなそうと努力したわけですし、国際的に政治的な主張を行っていくことは重要だったのだろうけれど、最後の最後に詰めを誤ってしまったのがいけなかったのだと思いました。
開戦に至ったのは東條さんだけが悪いわけではない、反対派も含めて誰も止められなかったのだ、というのが今回のドラマの趣旨だったと思うのですが、見終わった印象だとやっぱり東條さんがとどめを刺してしまったように見えてしまい、従来のイメージをひっくり返すには至らなかったのが残念でした。

というわけで、この記事が年内最後のブログ更新となります。皆さま良いお年をお迎えください。

*1:ゴルフと言っても別に、中の人のようにラウンドしながらバナナ食べまくったりはしてません(笑)。