日々記 観劇別館

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『宝塚BOYS』感想(2008.8.2ソワレ)

竹内重雄=葛山信吾 星野丈治=吉野圭吾 上原金蔵=柳家花緑 太田川剛=山内圭哉 山田浩二=猪野学 長谷川好弥=瀬川亮 竹田幹夫=森本亮治 君原佳枝=初風諄 池田和也=山路和弘

レポートが遅れましたが、8月2日に『ミス・サイゴン』のソワレを観た後、母と別れて今度はシアタークリエで友人と待ち合わせ、『宝塚BOYS』の再演を観てきました。
昨年観た際には開演時間を勘違いして開演直後の10分間を見損ねた自分でしたが、今回はしっかり最初から観られました。1幕の最初は、上原が稽古場に礼をして入ってくる場面から始まり、2幕のラストは上原が礼をして稽古場を去る場面で終わる、というのを昨年観た友人からは聞いていましたが(ちなみにこの日も同じ友人と観劇でした)、それを初めて自分の目で確認することができました。

前回のレポを読むと、星野がツンデレだと騒いでますが、今回は実は星野が善い奴だと分かってみているためか、さほどツンデレには見えませんでした。舞台の世界の酸いも甘いも知っていて斜に構えているのは一緒だけれど、どこか皆に対する「お兄ちゃん度」が強くなっていると思いました。
宝塚歌劇団男子部員7人のうち3人(太田川、長谷川、竹田)が初演メンバーとは入れ替わっていました。初演メンバー、特に年長者2人がどこか一癖ある雰囲気だったのとはまた違って、何だか皆可愛くなってしまった印象がありました。もう少し、他に行くところがない、という必死感で尖ってくれていても良かったのだけれど。

脚本は多分昨年とほとんど一緒だったと思います。細かい変更はあったかも知れませんが、例によって昨年の記憶自体いい加減で、観ながら少しずつ先の展開を思い出している状態でしたので……。ただ、二箇所ほど、あれ?と思った所がありました。
ひとつは男子部員に歌劇団生徒への付け文疑惑が持ち上がる場面で、昨年は星野の「オレはそんなに女に不自由していない」という意味の台詞があったような記憶があるのですが、今年はそうした台詞がなかったような気がします。もうひとつ、やはり星野の、興行主の女に手を出して落ちぶれた舞台人の実父について語る場面で、「その女がオレの母親だ」という台詞。あれ?そんな設定、昨年はあったっけ?と引っかかりましたが、これまた自分の記憶に自信なし。BOYSのDVDを持っていれば確認できると思いますが、現在の所未購入です。
それから、1幕のダンスレッスンの場面は、初演以上に楽しさが際立っていたように思います。日舞風だの手足ぶんぶんしまくりだのと1人1人の個性を打ち出しつつどこまでも噛み合わない動きに、かなり爆笑させてもらいました。それでいて吉野さんの完璧ダンスも堪能できるという、非常に美味しい場面でもあります。

今回観て改めて気がついたのは、7人の心に戦争の影が色濃く落ちていること。元々台詞の端々に軍隊の話は出てきていたし、そもそも途中で加入する最年少の竹田が戦災孤児という設定なのだけど、冒頭で山路さん演じる歌劇団の池田を、最初のメンバー6人全員軍隊式の最敬礼で迎えていて、これは敗戦から間もない時期の話なのだ、と印象づけてくれていました。その池田への対応が徐々に柔らかくなっていく様子を見て、ああ、戦後だなあ、と思えると同時に、池田への信頼が強まっているのが分かるようになっているので、なるほど、と感心したりして。
その池田は自分から多くは語らないけど静かな情熱と志を持ち、男子部のためにひっそり奔走してくれている日本男児なおじ様です。個人的には、もう山路さん以外の役者が考えられません。

この演目は、結局は努力が報われない挫折の物語なのですが、だからこそ終盤の夢の大階段レビューがとても輝いて見えます。初演とは結構レビューのダンスが変更されていました。確か初演では山田の日舞風決めポーズ等があったような気がしますが、そういうお遊びが一切なくなっていて、全員大真面目に華麗にヅカダンスをこなしていました。と言うか、皆さんダンス上手すぎです。昨年ひとしきり感服させられた初風さんのソプラノも健在でした。

全体を通して、役者さんの演技もダンスも、以前よりパワーアップしていて、最初から最後まで爽やかな後味でした。なのに、土曜夜の公演にしては空席がちらほら見受けられたのが実に勿体なかったです。この演目のリピート観劇こそする予定はありませんが、きっと繰り返し観る毎に違う面白さの味が出てくるものと期待しています。