日々記 観劇別館

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『テイクフライト』感想(2007/11/24プレビュー初日)

アメリア・エアハート=天海祐希 チャールズ・リンドバーグ他=城田優 ウィルバー・ライト他=池田成志 オーヴィル・ライト他=橋本じゅん フレッド・ヌーナン他=小市慢太郎 ピーター・パーク他=坂元健児 ドナルド・ホール他=今拓哉 ジョージ・パットナム=宮川浩 オットー・リリエンタール他=ラサール石井

M!で盛り上がる帝劇を尻目に、ご近所の東京国際フォーラムで『テイクフライト』を観てきました。
女性初の大西洋横断飛行を成し遂げた飛行士アメリア・エアハートの生涯を主軸に、人類初の有人飛行を成功させたライト兄弟の苦難、そして同じく人類初の大西洋単独無着陸横断飛行を敢行したリンドバーグの挑戦という合わせて3つのストーリーが、悲運の死を遂げた飛行家リリエンタールを狂言回しにして舞台上で同時進行で展開されていきます。
それぞれのストーリーの時代が異なる上(1900年代(ライト兄弟)、1920年代(リンドバーグ)、1920年代末〜1930年代(アメリア))、狂言回しとして19世紀の人物であるリリエンタールも登場するもので、最初は混乱しまくりでしたが、それぞれの主人公が違う魅力を放っていたので、割とすぐ世界に入り込むことが出来ました。

良かったのはライト兄弟役の成志さんとじゅんさん。手塚治虫の漫画のキャラクターのチック&タックと言って分かってもらえる自信がないんですが(^_^;)、くそまじめな成志兄さんととぼけた弟のじゅんさんが、ああでもないこうでもないと飛行機作りに試行錯誤するさまが、古き良きアメリカの2人コントのノリで楽しかったです。後2つのアメリアとリンドバーグの話が割と重ためだったので、ライト兄弟のエピソードが緩衝材になっている感じでした。2幕のカントリー風デュエット「おかしな事」では客席の手拍子を煽ってましたが、プレビュー公演のためか客席のノリはあまり軽快ではなかったです。
城田くん演じるリンドバーグはまず何よりも長身が印象的。身長180cmはある筈の設計士ドナルド役の今さんが小さく見えました。多分山口さんよりも大きいんじゃないかな?前に観た『スウィーニー・トッド』では不気味メイクでしたが、今回は悩みは多いながらも健康的で美しい若者役でした。歌声も綺麗だけれど、個人的にはもう少し艶やかに拡がってくれる声の方が好みです。
そして天海さんのアメリア。台詞回しも姿形も、涼やかかつ強い意志の女性航空士そのものでした。ただ、舞台のお仕事自体が久しぶりというのもあってか、歌はちょっと弱めのように感じられました。声量はあるのだけど高音があまり出ていなかったのが残念。本業ではないラサールさんの方が歌詞は時々聴き取りづらいけど余程声が出ている、と思う場面がいくつかありました。
出演者の中では、実は今回、今さんが目当ての1人だったのですが、危惧していたとおり出番はさほど多くなかったです。大学事務官(妙にはまっていた)、リンドバーグのライバル飛行士(設計士の立ち位置のままで帽子だけかぶり直して演じてました)等いくつか役替わりはありましたが、メインの役は先に書いたとおりリンドバーグの乗機を設計したドナルドで、リンドバーグの兄貴分のような存在。リンドバーグのライバル達登場の場面で軽くツイストダンスをしていたのが何だか可愛らしかったです。
あと、出色だったのは、アメリアの夫パットナムを演じた宮川浩さん。登場して一言歌っただけで歌唱力に惹きつけられました。パットナムはお坊ちゃんなのですが、育ちの良さ故の身勝手さと鷹揚さと優しさとが絶妙に同居している役でなかなか素敵でした。ご本人のブログによると急遽出演が決まった(誰かの代役?)ということでしたが、ちっともそんな急ごしらえを感じさせない程に役にはまっていたと思います。

演出は宮本亜門さん。開幕前に、
「これはプレビューであって初日ではありません。今日の昼間にやっと通し稽古を終えたところです」
等、亜門さんご自身からのご挨拶がありました。
亜門さんの演出作品を観るのは今年1月に『スウィーニー・トッド』を観て以来でしたが、今回の『テイクフライト』を観て改めて、全体にさらりとした上品な味わいで、あまりアクが無いなあ、という感想を抱きました。別の言い方をすれば、ウェットさや様式美が極力排除されている感じ。『スウィーニー』の時は血生臭さが取り除かれて核になる人間ドラマが研ぎ澄まされていて好みでしたが、今回はそのアクの薄さ加減にちょっと物足りなさを覚えてしまった面もあるのは否めません。それでも、後味さわやかで楽しい舞台でしたので、きっとプレビューを終えて本格的な公演日程に入った現在ではもっと味わい深くなっているのではないかと期待しています。と言っても、もう12月はM!等他の演目を観る予定が入ってしまっているから、『テイク』を観る予定は無いのですけれどね(^_^;)。