日々記 観劇別館

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『宝塚BOYS』感想(2007/6/21ソワレ)(6/23書き足し)

キャスト:竹内重雄=葛山信吾 星野丈治=吉野圭吾 上原金蔵=柳家花緑 太田川剛=三宅弘城 長谷川好弥=佐藤重幸 竹田幹夫=須賀貴匡 山田浩二=猪野学 君原佳枝=初風諄 池田和也=山路和弘

本日仕事がかなり立てこんでいて、罪悪感とかここで早退しちゃって本当に私大丈夫?とか色々思うところはありましたが、それでも何とか早く出て東京行きの電車に乗ることができました。
思ったより早く着いて余裕しゃくしゃく、とばかりに途中でおむすびなど食べてみたりして。ところが開演時間を30分遅く勘違いしていたことが劇場ロビーに着いてから判明!係員の方の誘導で10分遅刻で着席しましたが、現地合流予定の友人にも心配をかけてしまったし、いや、他人のネタとしては良く聞く話だけど、まさか自分がやってしまうとは、と軽いダメージ。しかもこの日ってDVD用の映像収録の日(恥)。係員のホタル嬢に従って出来るだけかがんで客席入りしたし、後方の客席だったんで映りこんだりはしていないと思いますが、ああ、自分のバカバカ、と頭の中で自身をポカポカ殴りつけていました。
観始めた時には既に花緑さんと後二人登場済みでしたが、目当ての吉野さんはまだ出ておらずホッ。その後六人目のメンバー星野として山路さん演ずる宝塚歌劇団職員の池田に連れられて登場しました。
この星野が男子部唯一のプロダンサーという設定で、なかなかにツンデレな役でした。最初はど素人の仲間達をバカにしまくっていて、初風さん演じる寮母さんだけにデレなのだけど、仲間と様々な試練を乗り越えていくうちにかなりデレ度が増していきます。彼の斜に構えた性格は夢の世界の裏側の汚さや非情さを見尽している故というのが劇の進行とともにわかるので、余計にそのデレぶりがいとおしかったりするのでした。

この演目は一応ストプレの筈ですが、題材が題材だしダンスに定評のある吉野さんも出るし、歌もダンスも少しは期待できるに違いない、と思いつつ臨んだところ、思いの外楽しめる場面が満載で嬉しかったです。まず吉野さんのダンスは動きの緩急の付け方と言い身体のバネの使い方と言い別格としても、他の役者さん方のダンスも相当に練習を積んだのだろうと思われますが、良い感じに仕上がっていました。特に花緑さん。実のお兄さんがバレエダンサーなだけに血は争えないな、と思わせてくれる綺麗なダンスでした。後で友人に聞いたところ、子供の頃実際にバレエを習っていたそうで、さもありなんと合点*1。全員でのダンスシーンは何度かありましたが、とりわけクライマックスのダンスは頑張れー、と応援してしまいました。ただ、その時の応援は、それまでの芝居ですっかり男子部の面々に感情移入していたので、役者さんの頑張りに、というよりは苦労してきた男子部に対して向けられていたように思います。

これは少しだけネタバレになりますが、2幕前半と終幕近くに初風さん*2演じる寮母の君原が歌って踊る場面があり、実に素敵でした。初風さんは東宝ミュージカル版エリザでしか観たことがなかったのだけど、恐らくゾフィー様の歌は初風さん本来の音域よりちょっと低めだったのではないでしょうか。柔らかいソプラノの綺麗なお声で、流石ベルばらの初代マリー・アントワネット!と思いました。
良かったのは山路さん。とても初日の半月前まで帝劇でフランス人になっていたとは思えない(笑)、自分は恐妻家のしがないサラリーマンだとうそぶきながら心にくすぶる夢を消しきれないオヤジを渋く演じきっていました。歌劇団スタッフの中で誰よりも男子部に強い思い入れを抱き、ままならない現実と格闘しつつ、男子部の面々の前では時に悪役になり、不満を真っ向から受け止める姿がダンディズムに満ちあふれておりました。

皆さん芸達者な方が多くて安心して観ていられたのですが、個別のシーンで特に良かったのは、病に倒れて休団せざるを得なくなったあるメンバーが、病院を抜け出して夜の稽古場を1人訪れる場面。窓から差し込む月明かりに照らされながら、自分の人生は何もかもが中途半端に終わってきた、ここに戻ってレッスンして舞台に立ちたい、と嘆くさまが、本当に涙が出る位美しかったです。
ついに一度も宝塚大劇場に立つことの出来なかった宝塚男子部の悲喜劇、ということで、もちろん泣かせどころもいっぱいあったのだけど、コメディ部分でも役者の皆さんの息があった掛け合いが本当に楽しくて、ラストも男どもの話なんで悲しみを引きずっていなくて、後味良く劇場を出ることが出来ました。再演希望。
ところで劇場(ル テアトル銀座)の外にWOWOWの中継車が停まっていました。そのうちWOWOWでも放映するのかも知れません(放映しなかったらごめんなさい)。

*1:花緑さんは劇中でたびたび見事なピアノ演奏も聴かせてくれます。何て芸の幅の広い人なんだ!

*2:公演パンフによると、初風さん、男子部が陰コーラスを務めた大劇場公演を実際にご覧になられたことがあるそうです。貴重な生き証人。