日々記 観劇別館

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『ダンス・オブ・ヴァンパイア』観劇記(8/26マチネ)

キャスト:クロロック伯爵=山口祐一郎、アブロンシウス教授=市村正親、アルフレート=浦井健治、サラ=大塚ちひろ、ヘルベルト=吉野圭吾、クコール=駒田一

ということで、マイラストTdVを観てきました。
12日ぶりのちひろサラ。一度たまきサラを観てしまうと、やはり頭身と背丈で伯爵とのバランスが何割り引きかになってしまいます。何故か『女神の恋』の末吉(松本明子さん)との踏み台ラブシーンを思い出してしまいました。いや、ちひろちゃんの公式プロフィールを見ると161cmということなので、末吉の身長(公称152cm)に比べると別に小さいわけではないですし、そもそもあの伯爵と釣り合う身長というのはとても限られているでしょうけれど。
ちひろサラに文句ばかり言っているようですが、結局TdV観劇6回のうち5回までがちひろサラだったということの八つ当たりなわけでして(笑)。声質は私的にはたまきサラより聴きやすいですし、実年齢の若さ故に「少女の残酷さと傲慢さ」をすんなり出せてるのは良いと思います。
座席は2F下手のA席でした。しかし、同じ2FのS席、しかもどセンターだった24日の座席よりも見やすかったのは何故でしょう、東宝さん?下手席の欠点と言えば、伯爵が入場時に舞台に上りきるまで前の席の方の頭に隠れて姿を見られないこと位です。
伯爵と言えば愉快なのは、前も派手な手の振りをネタにしたお風呂突撃シーン。人を惹きつける眼差しも歌声も大人の色気満載なのに、歌いながら歩いて移動する時の手足の振りがぶんぶんしていてあまりにも元気。「精力的」とか「スタミナ」とかそういうのではなく、シンプルに「元気」。でもそのギャップが可愛いおじ様です。

ここで伯爵以外の人々について。
クコールは今日もまた可愛かったです。幕間に後ろの席の人が映画『吸血鬼』のネタバレ話をしていたので、どうして健気に職務をこなすだけの彼が最後狼の餌食にされるのかが分かってしまいました。そんな彼をTdV随一のマスコットキャラとして作り上げた駒田さんの演技力に乾杯。
幕間のクコール劇場は、ヴァンパイアダンサー加賀谷さんが赤い絣っぽい野良着を身にまとい、手ぬぐいで頬かむりをして登場しました。顔が見えなかったので最初加賀谷さんとわからず。途中でクコールがリフトして、サラの夢想シーンのヴァンパイアダンスを始めたので、もしかして?と思っていたところ、やはりそうでした。さて前楽と楽は誰がゲストとなるのでしょうか?
宿屋の女中にしてサラの父親シャガールの愛人であるマグダ役の宮本裕子さん。7月の初見時は声が全然出ていなくて「あちゃー」な感じでしたが、今はかなり声が通るようになっています。7月で観劇をやめていたら、多分評価が低いままだった筈です。キャストの成長って本当にあるんだなあ、と思いました。それでも本日の終演後に辛口評価を下してる人を見かけてしまいました。宮本さんって一応四代目ピーターパンの筈なんですが。ちなみに五代目が笹本玲奈ちゃんだったらしいです。
浦井アルフ。ヘタレぶりは24日よりは全体におとなしめだったような気もしますが、ヘルベルトからの逃走シーンだけは何故かパワーアップし、文字で書き表せない悲鳴も強烈になってました。
そのヘルベルトの本日のお風呂シーンは、あれ?24日と同じでうさぎのぬいぐるみをくわえてる?と思いきや、右手にもう1体同じうさちゃんを持ってました。あのうさちゃんの正体は一体何でしょう?アルフとのダンスの決め台詞は「いいわぁ〜、いいわぁ〜、優しくしないでぇ(はあと)」、逃走アルフを出迎える時の台詞は「噛ませて下さい!」で、アルフが「ごめんなさい!」すると「やっぱりなぁ〜!」と叫んでました。で、教授に下手まで追いつめられると客席にお尻を向けて仰向けに倒れ込んでセクシーポーズ。倒れ込み時間がちょっと長めで、教授につつかれてようやくご退場してました。
いつもヘルベルトのお笑い場面ばかり書いてますが、舞踏会のシーンでサラをエスコートする時のマント捌きがむやみに美しいことは特筆しておきます。そして、クライマックスの手下のヴァンパイアを即製十字架にぶん投げておいて逃げるというバイオレンスな行為。父上に比べるとコントロールしきれていない獣性と、普段の女性的な仕草とのギャップがたまらない魅力です。

伯爵に話を戻しますと、本日最も心して聴いたナンバーは『抑えがたい欲望』でした。本当これって、緩急が難しそうで、また最後に弱音を長く伸ばした後にバズーカトーンに移行するという、歌唱力のある人が正攻法で向き合わないと歌えない曲だとつくづく思います。そして歌う伯爵の周囲を罪から逃れられない亡者のようにはいずり回って踊るダンサー新上さん。欲望が世界を支配するということのイメージが、この物語のエンディングの底抜けな明るさと表裏一体の暗い情念で彩られた歌とダンスで示されてます。改めて、大変に怖い場面でした。
そして舞踏会のシーン。いつも伯爵吸血に気を取られてしまうので、最後ぐらいは他のキャストの動きも観たかったのですが、やはり吸血に目を奪われてしまいました。何だかんだで綺麗ですし、それに、吸われてからも陶酔しているサラの手を取り、にっこり小首をかしげてダンスを促す伯爵の表情が何とも言えず艶っぽいのです。ヴァンパイアにとっては相手はただの獲物の筈なのに、そこには色々な情感が込められているようです。

教授達が逃げおおせて、サラとアルフが舞台を去り、教授も舞台を降りてヴァンパイアダンスが始まる頃には、ああ、終わりなんだなあ、と寂しさが最高潮に達しました。
と言いつつ、カーテンコールで教授に十字架を突きつけられた伯爵が上体をぐねぐねひねりながらばったり倒れる様はしっかり見届けてます。開幕時に映し出された“Tanz der Vampire”のタイトルロゴが映し出されて、それで終了。キャスト&スタッフの皆さん、楽しい夏をありがとう。残り2回公演、頑張ってね、と願いつつ劇場を後にしました。

何だかこれでマイラスト、というのが信じられなくて、レポもやや不完全燃焼気味なので、後でまた何か書くかも知れません。とりあえず今夜は、他の方が記す前楽レポを探しに行きたいと思います。

(おまけ)
帰路に有楽町駅近くの金券屋で、楽のS席チケ70,000円(!)という貼り紙を発見しました。ちなみに一番安い席でも1枚32,000円でした。殺ス!って思ってしまいました。