キャスト:クロロック伯爵=山口祐一郎、アブロンシウス教授=市村正親、アルフレート=浦井健治、サラ=剱持たまき、ヘルベルト=吉野圭吾、クコール=駒田一
TdVは何度か観てますが、たまきサラは初めてにして最後です。
ちひろサラに比べて、小娘っぽさが低いのが特徴。ちひろサラが十代のあふれるエネルギーを抑えきれずにお城に走っていくとすれば、たまきサラは抑圧され退屈な日常に倦みきって眠っていた情熱を、伯爵との出会いで呼び覚まされ、熱に浮かされたままお城に行ってしまった感じ。
頭身もあってすらりとしたスタイルなので、伯爵と並んだ時のバランスはちひろサラよりも良いように思います。声は高いけど独特のハスキーさがあるので、伯爵やアルフレートとハモった時の響きが面白いです。もう少しだけ声量があれば理想的なのですが。
また、2F席もTdVでは初めてでした。1Fでの客席降り演出に慣れていたので、あちこちの評判で聞いてはいましたが、2Fはやや置いてけぼり感あり。
伯爵ご入場シーンで、
「ああっ、そろそろ舞台手前まで大きい人が来てるのに…ここからは大きい人が見えない!」
ともだえ苦しんでいたのは私です。(大きい人って一体>自分)
あと、帝劇の2F前列センターだったのですが、この付近は座席改装後も何故か千鳥配列になっていないのですね。真ん前の席に頭のサイズがビッグな方に座られるとかなり辛いものがありました。センター席なのに、首を傾けないとセンターが見えないとは(笑)。
しかし伯爵がお風呂場に突撃する時のクレーンアームを操作する人の頭やアームの付け根が見えるのは2Fならではで、なかなか笑えました。
浦井アルフには7月17日以来の再会でした。たまきさん同様頭身があって、歌の高音部が綺麗で、本物の西欧人の子みたいで可愛いのですが、ヘタレ具合は相変わらず泉見アルフを凌駕しております。すぐヒーヒー言ってギャーギャー泣くし。教授も浦井アルフにだけ「お前はヒーヒーばかり言って!」という台詞を浴びせますし。
ヘルベルトから逃げる時は「ギャー☆※●$◎★▽!」という文字表記不能な悲鳴を上げてました。加えて走るのがむやみに早い!ヘルベルトがアルフが持ってた本のページを開くか開かないかのうちにあっという間に舞台にご帰還していました(^^;)。
そしてこの演目の色物担当2号ヘルベルト(1号はクコール)。本日のご入浴では何故かうさぎのぬいぐるみを口にくわえて出現。アルフとのダンスでの叫びは今まで多かった「パラダイス!」ではなく「初体験!」。逃げて戻ってきたアルフを迎える時は、「付き合って下さい!」「ごめんなさい!」の懐かしのねるとん風やりとりをしてました。しかし、若い浦井君がねるとんとわかって演じていたかは不明です。
市村教授は見るたびに小芝居が増えてます。
例えば、図書室のシーンで書架に潜る際おでこをぶつけ、次の登場時に×型でなく+型にバンソーコーを貼るというのは、前回観劇時(8月14日)にはやっていなかったような気がします。
また、アルフを襲うヘルベルトを追い払うシーンでは、通常はセンター付近まで追うに留めていたのに、本日は上手の方まで指でクロスを作ったまま執拗に追いつめていました。
さて、真打ち伯爵。本日もお歌は盤石、眼差しもキラキラで何よりでした。教授との初対面シーンでは、ヘルベルト、クコールとともに4人で頭を鏡獅子状態でぐるんぐるんさせていました。このアクション、14日の時にもやってましたが、定着したということでしょうね。
また、ちひろサラの時よりたまきサラ相手の方が、共演シーン(特に舞踏会での吸血)の演技がアダルトに感じられるのは気のせいでしょうか?もしかして相手が小娘だとお父さん気分になってしまうんだろうか?とかしょーもないことを考えてしまいました。
色物担当1号のクコールは、今日も頑張っていました。伯爵の背中〜腰すりすり&頭突きを見るたび、今、客席の何人が「私もクコールになりたい」と考えているんだろうなあ、とつくづく思います。
幕間のクコール劇場のBGMは「赤い靴はいてた女の子」。クコール、サラの赤い靴をバケツから取り出して、せっせと大事そうに磨いていました。まさにサラって異人ならぬ人と異なる者に連れられて行っちゃったわけですが、ええ。
本日一番の衝撃シーンは役者さんには申し訳ないけど、カーテンコール。伯爵が教授に十字架を突きつけられた時、床に膝をついたと思ったら、何とイナバウアー状態でのけぞっておりました。しかもかなりの角度をキープ。感動して隣にいた山口ファンの友人に、
「山口さん、実はすごく身体柔らかかったんだねー」
と言ったら、「実は」は余計だと叱られてしまいましたが(笑)。もしかして元四季のトップ役者に対してすごく失礼なことを言ってますか?自分。
最後に、既にTdVを観た人々の共通認識かも知れませんが、ちょっとだけ苦言。
公式ブログで流れていた舞台準備の映像を観て、大変多くのスタッフの手間と技術がこらされているのは大変よく分かりました。
でも……それでも……もう少し舞台装置に豪華に手をかけて欲しかったです。特に墓地や舞踏会のセット。パンフに載っていたウィーン版の舞台写真と比べると、あまりにシンプル(悪く言えばチープ)すぎ。
また、演出については、せっかく山口さんのように、いくらでもゴージャスに盛り立てられて、かつ女性の萌えツボを追究し甲斐のある役者さんが主演なのに、今ひとつ地味でもったいないと感じております。巨大コウモリに載せる以外にも山口さんの効果的な使い方は何通りもある筈なのに。
キャストの皆さんがアドリブや小芝居で盛り上げてくれるのはとても楽しいのですが、ここまで頑張らないといけないほど演出が地味なのか、と複雑です。
なお、ダンスシーンは、最初はストーリーから浮き上がっているような印象を受けましたが、回を重ねるごとに最初ほどは乖離しなくなってきたと思います。見慣れただけかも知れませんけれど、ダンサーの動きがなめらかに揃ってきたというのも一つの原因ではないでしょうか。